【在留特別許可の弁護士】在留特別許可に関する裁判例 東京地裁平成22年6月8日

今日は,在留特別許可に関する裁判例をご紹介いたします。
ミャンマー国籍を有する外国人について難民に該当するとして,難民の認定をしない処分等は取り消され,在留特別許可をしない処分は無効とされた事例です。

<事案の概要>
本件は,ミャンマー国籍を有する外国人である原告が,ミャンマー及び日本において反政府活動に従事していたこと等により帰国すれば迫害を受けるおそれがあることから入管法2条3号の2並びに難民条約1条及び1条にいう「難民」に該当すると主張して,原告に対してされた難民の認定をしない処分,入管法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決及び退去強制令書発付処分の各取消し並びに入管法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない処分の無効確認を求めた事案である。

<本件の争点>
①本件不認定処分の取消事由の有無(Xの難民該当性の有無)
②本件在留特別許可の不許可処分が無効であるか
③本件裁決の適法性
④本件退令発付処分の適法性

<本件判決の内容>
1.争点①本件不認定処分の取消事由の有無(Xの難民該当性の有無)
(1)判断基準
  入管法にいう難民とは,「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及び常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって,当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの」をいう。そして,上記の「迫害」とは,通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって,生命又は身体の自由の侵害又は抑圧を意味するものと解するのが相当であり,また,上記にいう「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」というためには,当該人が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情のほかに,通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していることが必要であると解される。
(2)判断基準へのあてはめ
原告は,専門学校に在籍中にCNF(チン民族戦線)のために寄附金を集めるとともに,CNFが作成した政治宣伝チラシを配布する活動に従事していたが,その活動がミャンマー政府の知るところになれば,原告は,その政治的意見を理由に身柄を拘束されるなどして生命又は身体の自由の侵害又は抑圧を受ける相当程度の蓋然性があるということができる。その上で,原告の父がチン州ハカー郡区におけるNLD(国民民主連盟)の幹部であったことや,原告自身もCNFの活動に従事していたBとの関係やNLDの構成員としての活動等に関し数回ミャンマー政府当局者から取調べを受けていることなどからすれば,原告がミャンマー政府ないしその政策等に批判的な意見を有する者であることをミャンマー政府に把握されている可能性が高いということができることに加え,原告が日本に入国した後に,CNFの元構成員がミャンマー政府当局者に対し原告がCNFの活動を支援したこと等を供述したというのであるから,これらの事情は,通常人が原告の立場に置かれた場合にもその政治的意見を理由に迫害されるとの恐怖を抱くような客観的事情であるということができる。
以上によれば,本件不認定処分当時,原告は,その政治的意見を理由にミャンマー政府から迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であったと認められる。
よって,原告については,難民に該当するものと認めることができるから,本件不認定処分は,違法であり,取消しを免れない。
2.争点②本件在留特別許可の不許可処分が無効であるか
(1)判断基準
 在留特別許可をすべきか否かの判断は,法務大臣等の広範な裁量にゆだねられていると解すべきであり,法務大臣等による判断が違法とされるのは,上記判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,法務大臣等に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に限られるというべきである。
 行政処分が法定の処分要件を欠き違法である場合に,当該処分の取消しを求める司法上の救済手続においては,法定の出訴期間の遵守が要求され,その所定の期間を経過した後は,原則としてもはや当該処分の瑕疵を理由としてその効力を争うことはできないものとされているが,その瑕疵が重大かつ明白で当該処分が無効と評価される場合には,このような出訴期間による制約は課されないものとされている。かかる無効原因として瑕疵の明白性が要求される理由は,重大な瑕疵による処分によって侵害された国民の権利保護の要請と,これに対するものとしての法的安全及び第三者の信頼保護の要請との調和を図る必要性にあるということができる。そうであるとすると,一般に,入管法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない処分が当該外国人に対してのみ効力を有するもので,当該処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要が乏しいこと等を考慮すれば,当該処分の瑕疵が入管法の根幹についてのものであり,かつ,出入国管理行政の安定とその円滑な運営が要請されることを考慮してもなお出訴期間の経過による不可争的効果の発生を理由として当該外国人に処分による重大な不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には,上記の過誤による瑕疵が必ずしも明白なものでなくても,当該処分は当然に無効であると解するのが相当である。
(2)判断基準へのあてはめ
   原告が難民に該当すると認められるのは前記のとおりであるところ,本件在特不許可処分は,難民である原告についてこれが難民でないとの前提で入管法61条の2の2第2項による在留特別許可をせず,その結果,原告を迫害するおそれがあるミャンマーに向けて送還しようとするものであるから,法務大臣等に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものというべきである。そして,その瑕疵は,入管法の根幹についてのものというべきものであり,かつ,出訴期間の経過による不可争的効果の発生を理由として難民である原告について入管法61条の2の2第2項による在留特別許可をしないことは,原告に迫害を受けるおそれがある国に送還されるという重大な不利益を甘受させるものであり,出入国管理行政の安定とその円滑な運営の要請を考慮してもなお著しく不当なものであると認められる。
したがって,上記の瑕疵が必ずしも明白なものでなくても,本件在特不許可処分は当然に無効と解するのが相当である。
3.争点③本件裁決の適法性
原告は,入管法61条の2の6第4項に定める難民認定申請をした在留資格未取得外国人であるところ,上記のとおり,原告が難民であることは認められるものの,原告が難民であることは,原告が退去強制対象者に該当するか否かという点に係る特別審理官の判定に対する異議の申出に理由がない旨の本件裁決の違法事由であるということはできず,また,他に本件裁決に瑕疵があることをうかがわせる証拠もないことなども勘案すれば,本件裁決は適法にされたものと認められる。
4.争点④本件退令発付処分の適法性
(1)判断基準
主任審査官は,法務大臣等から異議の申出に理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは,速やかに当該外国人に対し,その旨を知らせるとともに,退去強制令書を発付しなければならないところ(入管法49条6項),難民条約1条の規定又は難民議定書1条の規定により難民条約の適用を受ける難民は,我が国の利益又は公安を著しく害すると認められる場合を除き,いかなる方法によっても,人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならず(入管法53条3項,難民条約33条1項),難民と認められない者であっても,その者に対する拷問が行われるおそれがあると信じるに足りる実質的な根拠のある国へ送還してはならない。したがって,当該外国人が難民であるにもかかわらず,その者を,これを迫害するおそれのある国に向けて送還することとなる退去強制令書発付処分は違法であるというべきである。
(2)判断基準へのあてはめ
原告は難民であるということができるから,原告を,これを迫害するおそれのあるミャンマーに向けて送還することとなる本件退令発付処分は違法であるというべきであり,取消しを免れない。

<コメント>
本判決の主たる争点は,Xの難民該当性の有無である。
入管法に定める「難民」の意義については,これまでの裁判例においても述べられているところであり,本判決もこれらの裁判例とおおむね同様の解釈に立っているようである。
また,難民該当性の有無は事実認定の問題であり,本判決は,原告が難民に該当する旨を判断したものである。
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