法務大臣の裁決と裁決の特例(在留特別許可)について

みなさんこんにちは、行政書士の溝口正樹です。
本日は、在留特別許可の概略について解説いたします。

1 裁決
 違反調査、審査、口頭審理の結果、退去強制対象者であるとされた容疑者、は、当該判断(退去強制対象者に該当するとの認定が、誤りがないとの判定)に異議があるときは、通知を受けた日から3日以内に、不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して、法務大臣に対して異議を申し出ることができるとされています。(入管法49条1項)
 なお、認定、判定事態には不服がない(その認定、判定通り退去強制対象者に該当することは自認する)場合でも、在留特別許可を求めて、法務大臣に対して異議の申出をすることができます。
 法務大臣は、異議の申出を受理したときは、異議の申出が、理由があるかどうかを「裁決」し、結果を主任審査官に通知することとされている。(同3項)
この法務大臣の裁決は、羈束行為であり、自由裁量によるものではありません。
 主任審査官は、法務大臣から、容疑者が退去強制事由のいずれにも該当しないことを理由として異議の申出が、理由があると裁決した旨の通知をうけたときは、直ちに放免しないといけません(同4項)。また法務大臣から異議の申出が、理由がない(退去強制対象者に該当する)と裁決した旨の通知をうけたときは、速やかに退去強制令書を発付しなければなりません。(同6項)
 納得のいかない容疑者は、法務大臣による、異議の申出に理由がないとする裁決に対して、取消訴訟を提起することができます。
2 裁決の特例
 法務大臣は、入管法49条3項の裁決にあたり、異議の申出が、理由がない(容疑者が退去強制対象者に該当する)と認める場合でも、当該容疑者が
① 永住許可をうけているとき
② かつて日本国民として本法に本籍を有したことがあるとき
③ 人身取引等により他人の支配下におかれて、本法に在留するものであるとき
④ 「他、法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」
のいずれかに該当するときは、在留を特別に許可することができる(同50条1項)。
この法務大臣の在留特別許可は、自由裁量によるものとされ、「違反の態様、家族関係(国内外)、生活状況、国際関係、国内事情(経済動向、労働需給関係、教育、福祉、治安等)等々日本社会に及ぼす影響を含め、総合判断して」、在留の許否を決定します。
 法は在留特別許可の許可基準を定めていませんが,在特に関する「ガイドライン」が公表されています。同ガイドラインにいう積極要素とは、プラスの要素(許可の方向で考慮される要素)、「消極要素」とは、マイナスの要素(許可されない方向考慮される要素)の意です。
在留特別許可を行う場合、法務大臣は、在留資格および、在留期間を決定し、他に必要と認める条件を付することができます。(同条2項)在留特別許可を得たものは、在留資格および、在留期間が決定されて当該在留資格に基づく在留が認められるのが普通ですが、条件として、一定の場合、特例上陸の種類および上陸期間が付され、また活動の制限など特に必要と認める事項が付されることがあります。(入管規則44条3項)
 なお、在留資格の決定を伴う、在留特別許可を得て、中長期在留者となる外国人へは在留カードが交付されます。(同50条3項)
異議の申出に対する法務大臣の裁決に不服がある場合、行政不服審査法による異議の申立てをすることはできませんが、(同7条1項10号)、行政事件訴訟法に基づき裁判所に救済を求めることはできます。
 なお、法務大臣に異議を申し出る場合に、情状を斟酌して、在留特別許可を求めることはできますが、在留特別許可は、退去強制手続の一環として行われるものであり、在留特別許可の申請という特別の申請手続が存在するわけではありません。   

名古屋栄行政書士事務所
行政書士 溝口正樹

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