【在留特別許可の弁護士】在留特別許可に関する裁判例  東京地裁平成18年3月28日

今日は,在留特別許可に関する裁判例をご紹介いたします。
父母に連れられて9歳の時に日本に不法入国し,その後約8年間日本において教育を受けていた中国国籍の原告について,在留特別許可を付与しなかった入国管理局長の裁決及び主任審査官の退去強制令書発付処分が違法であるとして,取り消された事例です。

<事案の概要>
中国国籍を有する男性である原告(本件退令処分当時17歳)が,被告入国審査官から本件各上陸許可取消処分を受け,その後,被告入国審査官から出入国法24条2号(不法上陸)に該当する旨の認定を受け,次いで,東京入管特別審理官から同認定に誤りがない旨の判定を受け,さらに,法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長から本件裁決を受け,被告主任審査官から本件退令処分を受けたため,不法上陸当時9歳であった原告には不法上陸について帰責性がなく,かつ,原告は,9歳から日本において教育を受けており,日本での教育を継続する必要があること等を理由に,本件各上陸許可取消処分はその必要性を欠く違法があり,また,在留特別許可を付与すべきであったにもかかわらずこれを認めなかった本件裁決は違法であり,それを前提とする本件退令処分も違法であるなどと主張して,被告入国審査官に対しては本件各上陸許可取消処分の各取消しを,被告東京入管局長に対しては本件裁決の取消しを,被告主任審査官に対しては本件退令処分の取消しを,それぞれ求める事案である。

<本件の主要な争点>
①本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えの適否
②本件裁決の適法性
③本件退令処分の適法性

<本件判決の内容>
1.争点①本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えの適否について
原告が本件各上陸許可取消処分を知ったのは,平成16年11月1日であり,原告が本件訴えを提起したのは,平成17年3月7日である。そうすると,本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは,原告が本件各上陸許可取消処分を知った日から4か月以上経過した後に提起されているということになる。
  出訴期間は,不変期間であり(改正前の行訴法14条2項),当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には,その事由が消滅した後1週間以内に限り,不変期間内に訴訟行為の追完をすることができる(民事訴訟法97条)。
 仮に,原告又はP1が,本件各上陸許可取消処分とその後の退去強制手続が一体のものであると誤信した事実があったとしても,それは,原告又はP1自身の主観的な問題にすぎないといわざるを得ない。したがって,原告の前記主張事実をもって,本件がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合に当たるということはできない。
 以上によれば,本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは,出訴期間経過後に提起された不適法なものであることが明らかであるというべきである。

3.争点②本件裁決の適法性について
在留特別許可を付与するか否かについての法務大臣の判断が違法とされるのは,その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,法務大臣が裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した場合に限られるというべきである。
 原告は,平成8年の来日当初は,日本語や日本での学校生活に苦労したものの,日本の学校で約8年間学習し,日本人の子供と全く変わりのない生活をするまでに至っており,その学習状況や生活状況に照らすと,今後とも学習を継続し,日本社会に溶け込んで,日本社会に貢献することが十分に考えられるところであり,自分の人生や将来についても真しに考察してこれを判断する能力があったと認めることができる。
 そうすると,被告東京入管局長が,原告の学習状況や生活状況,判断能力等について,前記判示のように適正に認定していれば,不法上陸及び不法滞在については原告に何らの責任もない以上,被告東京入管局長は,原告に在留特別許可を付与した可能性が相当に高かったであろうと推認することができる。
 以上によると,原告に在留特別許可を付与しなかった本件裁決は,その判断が全く事実の基礎を欠くことが明らかである。
また,仮に,被告東京入管局長が前記のような事実関係を把握していたのに本件裁決をしたというのであれば,被告東京入管局長は,原告が中国で出生し,小学校3年生の初めまで中国で教育を受けてきたことや,原告が未成年者であることを過度に重視したか,あるいは,不法上陸及び不法滞在につき原告自身を責めることができないため,原告について好ましくない者として類型的な評価をすることができず,かつ,国外退去させられることの不利益も十分に勘案すべきであることや,原告のこれまでの努力,中国語能力の乏しさ,原告が今後とも日本社会に溶け込んで,日本社会に貢献し得ること,自分の人生についての判断能力があること等を軽視して,在留特別許可を付与しないという判断に達したものと推認するのが相当である。そうであるとすれば,そのような判断は,社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるというべきである。
以上によれば,前記のとおり,在留特別許可を付与するか否かについて法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長に与えられた裁量権が極めて広範なものであることを前提としても,原告に在留特別許可を付与しないとする被告東京入管局長の判断は,全く事実の基礎を欠くことが明らかであるか又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであり,裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるというべきである。
3.争点③本件退令処分の適法性
 法務大臣等は,出入国法49条1項による異議の申出を受理したときには,異議の申出が理由があるかどうかを裁決して,その結果を主任審査官に通知しなければならず(同条3項),主任審査官は,法務大臣等から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときには,速やかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるとともに,出入国法51条の規定する退去強制令書を発付しなければならない(出入国法49条6項)。
  そうすると,本件裁決が違法である以上,これに従ってされた本件退令処分も違法であり,取消しを免れないといわざるを得ない。

<コメント>
本判決では,本件裁決中の在留特別許可を付与しないとの判断における裁量権濫用の有無が最大の争点となっている。
本件では,原告がいかんともし難い事情により,さかのぼって不法上陸者ということになったのであり,不法上陸や不法滞在について,原告に何らの帰責性もない。自らが意図して不法上陸や不法滞在を行った場合とは異なり,原告に責任を問うことができない本件のような例外的な場合については,在留特別許可の判断に当たっては,違法状態の時に生じた事実であっても,慎重に吟味しなければならないとしている。
そして,日本における生活や国外退去させられることによって失われる不利益についても,大きなものと見るべきであるとして,Xの本邦における生活,国外退去させられることによって失われる不利益,Xの将来の希望,Xの自活の能力等を総合考慮し,在留特別許可を付与しないとした判断について,全く事実の基礎を欠くことが明らかであるか,又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであり,本件裁決は違法であると判断した。
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