【在留特別許可の弁護士】在留特別許可に関する裁判例 東京地裁平成24年8月24日

今日は,在留特別許可に関する裁判例をご紹介いたします。
日本に不法残留したフィリピン共和国の国籍を有する未成年の兄弟についてされた在留特別許可をしないという判断は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであるとして,裁決及び退去強制令書発付処分が取り消された事例です。

<事案の概要>
原告X1及びX2は,いずれもフィリピンの国籍を有する未成年の男性であって兄弟であり,「日本人の配偶者等」の在留資格で本邦に在留する実母Aから呼び寄せられ,在留資格を「短期滞在」として本邦に入国し,その後,在留資格を「定住者」に変更する旨の在留資格変更許可申請をしたが,東京入管局長から不許可とされたため,不法残留するに至った。
 Xらは,それぞれ入管法24条4号ロ(不法残留)容疑での退去強制手続において,東京入管局長から異議の申出には理由がない旨の裁決を受け,東京入国管理局横浜支局主任審査官から退去強制令書発付処分を受けたことから,Xらは「日本人の配偶者等」の在留資格で日本に在留する実母であるA(フィリピン国籍を有する外国人の女性,X1X2の母)の扶養を受けている未成年で未婚の実子であり,日本への定着性も認められ,東京入管局長はXらに在留特別許可をすべきであったのにこれをしなかったものであるから,上記各裁決及び退去強制令書発付処分は違法であるとして,それらの取消しを求めた。

<本件の争点>
①本件各裁決の適法性
②本件各退令発付処分の適法性

<本判決の内容>:原告Xらの勝ち
1.争点①本件各裁決の適法性について
(1)判断基準
  入管法50条1項の在留特別許可は,同法24条各号が定める退去強制事由に該当する者について同法50条1項1号から4号までの事由があるときにすることができるとされているほかは,その許否の判断の要件ないし基準とすべき事項は定められておらず,外国人の出入国管理は国内の治安と善良な風俗の維持,保健・衛生の確保,労働市場の安定等の国益の保持を目的として行われるものであって,このような国益の保護の判断については,広く情報を収集しその分析の上に立って時宜に応じた的確な判断を行うことが必要であり,高度な政治的判断を要求される場合もあり得ることを勘案すれば,在留特別許可をすべきか否かの判断は,法務大臣の広範な裁量に委ねられているというべきである。
  もっとも,法務大臣に広範な裁量が認められているといっても,その裁量は無制約なものではなく,在留特別許可をするか否かについての法務大臣の判断が,全く事実の基礎を欠き又は社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかである場合には,その判断は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるというべきであって,このことは,法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長についても同様というべきである
(2)判断基準へのあてはめ
  定住者告示6号ニは,日本人等の配偶者で「日本人の配偶者等」等の在留資格をもって在留する者の扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子について,定住者としての地位を認めることとしている。そして,①Xらの実母であるAは,日本人Bの配偶者で「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留するものであり,Xらは,いずれもAの未成年かつ未婚の実子であること,②Xらは,稼働経験がなく,その来日後の生活費の大部分は,Aのパート従業員としての給料により賄われており,現に,生活を維持していること,③Xらは,A及びAとBとの間の子であるCと同居し,Cの保育園への送迎や家事の手伝いをするなど,家族として相互扶助しながら共同生活を営んでおり,Aの庇護の下で生活していることからすれば,Xらは,定住者告示6号ニに当たる。
  Xらは,入国後間もなくから日本語教室に通い始め,漢字を交えて文章を書くことができるほどに日本語を習得し,それぞれ日本の専門学校や高校に進学するため,極めて熱心に日本語を勉強することによって短期間にその能力を高め,日本社会への定着性を急速に高めつつあった。さらに,本件各裁決後の事情ではあるが,Xらは,平成24年4月から県立高校の定時制過程に進学するなど,日本社会への定着性を高める努力はその後も継続され,成果を上げている。
  一方,Xらが,日本に居住する目的で来日したにもかかわらず,在留資格を「短期滞在」とする上陸許可を受けて入国し,その後,不法残留に至ったことをもって,原告らの入国及び在留状況が,在留特別許可をするか否かの判断に当たり,特に重視すべきほど悪質であるとはいえない。また,Aが,Xらが不法残留となった後も本国に帰国させようとしなかったことも,母親の心情としては十分に理解でき,これをもって,Aは遵法精神が欠けるとか,未成年者に適した生活環境が整っていないなどと評価することは酷にすぎるものであって,むしろ,Aは,10代後半の原告らに決してアルバイト等で稼働させたりせず,Xらが在留資格を得て日本で生活ができるようになるまで,貧しくてもAの収入等で生計を維持していこうとしていたのであって,そこには法を遵守してXらと共に日本で生活していこうとする強い意思さえ見られる。そして,Xらが本国に帰国した場合には,従前のように祖父母がXらの面倒をみることは不可能であり,親族による生活支援や援助を期待することもできない
以上によれば,法務大臣の権限の委任を受けた東京入管局長が原告らに対して在留特別許可をせずにした本件各裁決の判断は,原告らが日本人の配偶者で「日本人の配偶者等」の在留資格をもって在留するAの未成年かつ未婚の実子であり,原告らの努力によって日本社会に急速に定着しつつあることなど,原告らに本邦における在留を認めるべき上記のような事情を十分に考慮しない一方,Aの収入が一般的には原告らを養育するに十分とは認め難いことや原告らが本邦に居住する目的で来日したにもかかわらず,在留資格を「短期滞在」とする上陸許可を受けて入国したことなどを殊更に重視した結果,原告らに在留特別許可をしないという判断に至ったというべきであり,法務大臣等の裁量権が広範であることを前提としても,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかであり,裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものというべきであるから,本件各裁決は違法であって,取り消されるべきである。
2.争点②本件各退令発付処分の適法性について
主任審査官は,法務大臣等から入管法49条1項の異議の申出は理由がない旨の裁決をしたとの通知を受けたときは,同条6項により,速やかに退去強制令書を発付しなければならないとされているところ,退去強制令書は,異議の申出は理由がない旨の裁決が適法に行われたことを前提として発付されるものであるから,本件各退令発付処分の前提となる本件各裁決が違法である以上,本件各退令発付処分もその根拠を欠くものであって,違法なものとして取消しを免れない。

<コメント>
 本判決は,在留特別許可をすべきか否かの判断は,法務大臣等の広範な裁量に委ねられており,その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念に照らして著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となることを前提とした上で,Xらが,「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留するAの未成年かつ未婚の実子であり,その扶養を受けて生活していること,短期間のうちに日本語を高度に修得するなど日本社会に急速に定着しつつあること,Xらが本国に帰国した場合にはその面倒をみる者がいないことなどを重視し,Xらに在留特別許可をしなかった各裁決は違法であると判断したものである。
 退去強制令書発付処分取消等請求事件は,法務大臣等の広範な裁量権を理由に棄却される事案が多いものの,個別の事情を丁寧に認定し,評価することにより認容する事例も見られ,本判決も,これらに続く認容ケースとして事例的意義を有するものと思われる。
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