【在留特別許可の弁護士】在留特別許可に関する裁判例 東京地裁平成26年1月10日

今日は,在留特別許可に関する裁判例をご紹介いたします。
退去強制対象者であるフィリピン人男性が永住者のフィリピン人女性と内縁関係にあったにとどまり,かつ,退去強制事由が不法入国である事案について,在留特別許可をしないでされた裁決に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったと判断された事例です。

<事案の概要>
フィリピンの国籍を有する外国人男性である原告Xが,入管法二四条一号(不法入国)に該当する退去強制対象者として,退去強制手続において,東京入国管理局長から入管法四九条一項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決(本件裁決)を受け,東京入国管理局主任審査官から退去強制令書発付処分(本件退令発付処分)を受けたことについて,原告が「永住者」の在留資格を有するフィリピン人女性であるBと内縁関係にあり,Bとの間に二人の子がいることなどからすれば,原告に対して在留特別許可をすべきであったから,本件裁決は裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法なものであり,本件裁決に基づく本件退令発付処分も,違法なものであるなどと主張し,本件裁決及び本件退令発付処分の取消しを求めた。

<本件の争点>
①本件裁決の適法性
②本件退令発付処分の適法性

<本判決の内容>:原告Xの勝ち
1.争点①本件裁決の適法性について
(1)判断基準
在留特別許可をするか否かについての法務大臣の判断については,その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により判断の内容が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるというべきであって,このことは法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長についても同様というべきである。
  以上の見地から,本件裁決における東京入国管理局長の判断が上記の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものと認められるか否かについて検討する。
(2)判断基準へのあてはめ
  ①原告は,本邦において生活する中で,「永住者」の在留資格を有し本邦に定着して生活基盤を築いているBと婚姻の本質を備えて成熟かつ安定した内縁関係を築き,当該内縁関係が比較的長期間継続しており,原告とBが婚姻届出に至らなかった原因は必要な書類を揃えるための費用上の問題であったこと,
②原告は,Bとの間に「永住者の配偶者等」の在留資格を有するCをもうけていること
③原告は,Bと日本人の間の前夫との間の三人の子とも交流するなどして,本邦に定着して生活基盤を築いていること,
④原告の子であるCは,ダウン症候群等であるため,フィリピンにおいて必要な療育及び治療等を受ける機会が非常に乏しく,本邦での治療等を必要としていること,
⑤原告がフィリピンに送還されると,その後におけるBと二人の子との生活が困難なものとなることが予想されることなどの積極要素を総合勘案し,
さらに,裁判所や行政当局が児童の最善の利益を主として考慮すべきことを定めている児童の権利に関する条約三条一や,児童がその父母の意思に反してその父母から分離されるべきではないとの原則を定めている同条約九条一の趣旨を参酌すると,
原告の在留特別許可の判断に当たり消極要素として考慮されるべき点(船舶で本邦に不法入国した後,長期間にわたり本邦に不法在留して不法就労をしたことや,外国人登録法三条一項の規定による新規登録の申請をしないなど,原告の入国及び在留の状況は,悪質であったことは否めない)が存在すること,原告とBとの間に法的な婚姻関係が存在せず,Bが永住者の在留資格を有する外国人であるにすぎないことを考慮してもなお,
原告に対して在留特別許可を与えるべきではないとした東京入国管理局長の判断は,考慮すべき積極要素を過少評価したものであって,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるというべきである。
  したがって,東京入国管理局長のした本件裁決は,裁量権の範囲を逸脱,濫用したものとして,違法であるというべきである。
2.争点②本件裁決の適法性について
 本件退令発付処分は,東京入国管理局主任審査官が,東京入国管理局長から,本件裁決をした旨の通知を受け,入管法四九条六項に基づいてしたものであるところ,本件裁決は違法なものであるから,本件裁決を前提とした本件退令発付処分も違法なものである。

<コメント>
 本判決では,在留特別許可をしないでされた裁決に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり違法であるか否かについて,本件の事案に即して,いわゆる判断過程の統制による審査がされている。
まず,原告の入国及び在留の状況について,Xは平成9年4月頃に不法入国した後10年以上の長期間にわたり不法在留して不法就労するなど,その入国及び在留の状況が悪質な点は,在留特別許可の許否の判断に当たり,消極要素として考慮すべき事情であるとしている。
一方,積極要素としては,①原告XがBと婚姻の本質を備えて成熟かつ安定した内縁関係を築いていたこと,②原告は,Bとの間に「永住者の配偶者等」の在留資格を有するCをもうけていること,③原告は,日本に定着して生活基盤を築いていること,④原告の子であるCは,日本での治療等を必要としていること,⑤原告がフィリピンに送還されると,その後におけるBと二人の子との生活が困難となることを挙げている。
 積極要素を総合勘案し,さらに,児童の最善の利益を主として考慮すべきことを定めている児童の権利に関する条約3条1や,児童がその父母の意思に反してその父母から分離されるべきではないとの原則を定めている同条約9条1の趣旨を参酌すると,在留特別許可の許否の判断に当たり消極要素として考慮されるべき上記の事情が存在し,XとAの間に法的な婚姻関係が存在せず,Aが永住者である外国人にすぎないことを考慮しても,Xに対して在留特別許可をすべきではないとした東京入国管理局長の判断は,考慮すべき積極要素を過少評価したものであって,社会通念に照らし著しく妥当性を欠き,本件裁決は,裁量権の範囲を逸脱,濫用したものとして違法であるとしたものである。
在留特別許可の許否の判断が法務大臣等の広範な裁量に委ねられていると解され,裁決が取り消される事例が多くはない中で,日本人又は永住者と内縁関係にあったにとどまり,かつ,退去強制事由が不法入国である事案について裁決が取り消される場合は限られていると考えられる。
 本件においては,XとAの内縁関係等について事実の誤認又は評価の誤りがあるともされているが,これらに加え,ダウン症候群等がある長男が定期的かつ頻繁に通院し服薬するなどしており,このことに起因し,Xが本国に送還された場合には,A,長男及び二男の生活を極めて困難なものにすることについての判断に事実の誤認又は評価の誤りがあったことが重視されているように思われる。
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