【在留特別許可の弁護士】在留特別許可の裁判例 東京地裁平成26年5月30日 

こんにちは、行政書士の後藤知子です。

今日は在留特別許可の裁判例をご紹介いたします。

<事案の概要>
ボリビア国籍のX母(偽装結婚による不法入国歴あり、日系3世)、およびX母と定住者ビザ(3年)を持つボリビア国籍の日系3世男性Aとの間に日本で生まれたX子ら(3名)に対して、入管から指示されたX子らの在留資格取得のための手続の完了を待つことなく東京入管局長から在留特別許可を与えないと判断され、退去強制令書が発付されたことは裁量権の範囲を逸脱しており違法となるとされた。
<判旨>
X母およびX子らに対して在留特別許可を与えないとした東京入管局長の裁決は、以下の事由から裁量権の範囲を逸脱した違法なものであり、またその裁決にしたがってなされた退去強制令書発付処分は違法であるとして取り消された。
① X母
X母は過去に虚偽の身分事項により偽装結婚し、内容虚偽のパスポートを持って日本に不法入国しており、これは在留特別許可の許否の判断にあたって消極要素となる。
しかしながら、X母にはその消極要素を上回る重要な積極要素又は積極要素として評価すべき事由(日系3世であること、日本への定着性が認められること、Aとの関係が婚姻の実質を備え安定・成熟したものであったこと、幼年の子らを監護養育していること等)が相当数認められる。この点から、X母に在留特別許可を与えないとした東京入管局長の判断は、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱している。
② X子ら
X子らは、日系3世であり定住者ビザで在留するAの子なので定住者ビザを取得しうる立場である。母親であるX母は不法入国の立場だが、X子らはX母の来日後に日本で出生しているため、不法残留に至った経緯について責められるべき点はない。
定住者であるAによるボリビアでのX子らの認知手続を行い、Aとの父子関係が法的に確定することが在留特別許可の許否判断において重要な積極要素となる点については、東京入管の担当者から事前にX母に伝えられており、X母はそのために必要な諸手続を進めている最中であった。そのことを東京入管も認識していたにも関わらず、X子らとAとの父子関係の確定に関する手続完了を待つことなくX子らに対して在留特別許可を与えないとした東京入管局長の判断は、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱している。
<コメント>
東京入管は、X子らとAとの父子関係の確定に関する手続の進捗状況についてX母から報告を受けており、X子らとAとの父子関係が近い将来法的に確定するであろうことを容易に予想できる状態であった。しかも、Xらが出頭申告をしてから違反調査開始まで約1年8か月経過しているなど、Xらに対する在留特別許可の許否の判断を急いで行わなければならない事情はなかった。本判決は、上記のような事情にも関わらず、上記手続完了を待つことなくXらに対して在留特別許可を与えないとした東京入管局長の裁量判断について違法とした事例であり、実務上参考になると思われる。

弊所では弁護士と行政書士が共同して事件解決に当たっています。

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