投資・経営ビザ取得の要件(ガイドライン 事業の継続性)

投資・経営ビザにおいて会社が赤字決算になってしまった場合に、事業の継続性に問題が生じます。法務省からガイドライン「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」が公開されており、事業所の確保や事業の継続性についての基準が公開されています。ここでは、事業の継続性についての部分に関してご紹介いたします。

 

2 事業の継続性について

事業活動においては様々な要因で赤字決算となり得るところ,当該事業の継続性については,今後の事業活動が確実に行われることが見込まれることが必要です。他方で,単年度の決算状況を重視するのではなく,貸借状況等も含めて総合的に判断することが必要であることから,直近二期の決算状況により次のとおり取り扱うこととします。

(1)直近期又は直近期前期において売上総利益がある場合

a 直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合

   直近期において当期純利益があり同期末において剰余金がある場合には,事業の継続性に問題はありません。また,直近期において当期純損失となったとしても,剰余金が減少したのみで欠損金とまでならないものであれば,当該事業を継続する上で重大な影響を及ぼすとまでは認められないことから,この場合においても事業の継続性があると認められます。

  したがって,直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合には,事業の継続性があると認められます。

 b 直近期末において欠損金がある場合

 (ア)直近期末において債務超過となっていない場合

       事業計画,資金調達等の状況により,将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性を考慮し,今後1年間の事業計画書及び予想収益を示した資料の提出を求めることとし,事業が行われていることに疑義があるなどの場合を除いて,原則として事業の継続性があると認められます。ただし,当該資料の内容によっては,中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出をさらに求める場合もあります。

 (イ)直近期末において債務超過であるが,直近期前期末では債務超過となっていない場合

       債務超過となった場合,一般的には企業としての信用力が低下し,事業の存続が危ぶまれる状況となっていることから,事業の継続性を認め難いものですが,債務超過が1年以上継続していない場合に限り,1年以内に具体的な改善(債務超過の状態でなくなることをいう。)の見通しがあることを前提として事業の継続性を認めることとします。

     具体的には,直近期末において債務超過ですが,直近期前期末では債務超過となっていない場合には,中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が,改善の見通し(1年以内に債務超過の状態でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出を申請者に求めることとし,当該書面を参考として事業の継続性を判断することとします。

(ウ)直近期末及び直近期前期末ともに債務超過である場合

      債務超過となって1年以上経過しても債務超過の状態でなくならなかったときは,事業の存続について厳しい財務状況が続いていること及び1年間での十分な改善がなされていないことから,事業の継続性があるとは認められません。

(2)直近期及び直近期前期において共に売上総利益がない場合

      企業の主たる業務において売上高が売上原価を下回るということは,通常の企業活動を行っているものとは認められず,仮に営業外損益,特別損益により利益を確保したとしても,それが本来の業務から生じているものではありません。単期に特別な事情から売上総利益がない場合があることも想定されるところ,二期連続して売上総利益がないということは当該企業が主たる業務を継続的に行える能力を有しているとは認められません。したがって,この場合には事業の継続性があるとは認められません。

※上記において主な用語の説明については以下のとおり

   直近期:直近の決算が確定している期

   直近期前期:直近期の一期前の期

   売上総利益(損失):純売上高から売上原価を控除した金額

   剰余金:法定準備金を含むすべての資本剰余金及び利益剰余金

   欠損金:期末未処理損失,繰越損失

   債務超過:負債(債務)が資産(財産)を上回った状態(貸借対照表上の「負債の部」の合計が同表の「資産の部」の合計を上回った状態のこと)

(参考)直近期決算で当期純損失のあった「経営・管理」の在留資格に係る入国・在留申

請の許否に係る事例については,以下のとおりです。

事例1

当該企業の直近期決算書によると,当期損失が発生しているものの,債務超過とはなっていない。また同社については第1期の決算である事情にも鑑み,当該事業の継続性があると認められたもの。             

参考指標(売上高総利益率:約60%,売上高営業利益率:約-65%,自己資本比率:約30%)

事例2

当該企業の直近期決算書によると,売上総損失(売上高-売上原価)が発生していること,当期損益は赤字で欠損金もあり,また,欠損金の額は資本金の約2倍が発生していることから,当該事業の継続性を認められなかったもの。

参考指標(売上高総利益率:約-30%,売上高営業利益率:-1,000%超,自己資本比率:約-100%)

※各種計算の手法は提出された直近期の決算書をもとに以下のとおり算出(利益はプラス,損失はマイナス。)。

売上高総利益率=売上総利益(損失)÷純売上高×100

売上高営業利益率=営業利益(損失)÷純売上高×100

自己資本比率=自己資本(剰余金又は欠損金を含む)÷総資本×100

 

以上のように、事業の継続性については、これらの指標を十分検討する必要性があります。赤字決算等でご不安な方は、専門の弁護士に相談しましょう。

 

投資・経営ビザに関するご相談は、元行政書士で入管VISA事件を多く取り扱っている弁護士永田洋子にご相談ください。

電話番号は0800-700-2323(フリーコール)

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