いわゆる三庁共同提言において紹介されている、逸失利益の算定についての具体的な適用例をご紹介致します。ここでは、有職者で事業所得者の事例をご紹介いたします。
2 事業所得者の場合
⑥事 故 日 平成9年1月
被 害 者 高校中退後色々な職業を経た後、40歳ころから個人で貨物運送業を営んでいた47歳の男性
事故前収入 年々売上を伸ばし年収900万円(事故前2年間の申告所得額の平均)
労働能力喪失率 79%(傷害)
【逸失利益の算定】
年齢、職業、実績からみて原則どおり基礎収入を実収入額とし、これに、労働能力喪失率の79%、及び、47歳から67歳までの20年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数である12.4622を乗じて算定する。
(計算式)
900万円×0.79×12.4622=8860万6242円
⑦ 事 故 日 平成9年6月
被 害 者 高校卒業後工務店に勤務して大工の修業をし、25歳の時に独立した27歳の大工(男子)
事故前収入 年収350万円
労働能力喪失率 20%(傷害)
【逸失利益の算定】
事故前の実収入額が、平成9年の男子の25歳ないし29歳の平均賃金である430万4900円と比較して低いが、独立してまだ2年であること、大工という自営業であっても経験年数につれて収入の増加が見込まれることからみて、生涯を通じて男子の全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められるから、基礎収入を平成9年の男子の全年齢平均賃金である575万0800円とし、これに、労働能力喪失率の20%、及び、25歳から67歳までの42年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数である17.4232を乗じて算定する。
(計算式)
575万0800円×0.2×17.4232=2003万9467円
⑧事 故 日 平成9年10月
被 害 者 大学医学部卒業後、医師の国家試験を受験していて、平成9年に試験に合格するまで5年間は家庭教師のアルバイトによる収入しかなかった29歳の妻帯男子(子供なし)
事故前収入 年収72万円(家庭教師のアルバイト)
労働能力喪失率 100%(死亡)
【逸失利益の算定】
事故前の実収入額は極めて少ないが、医師の国家試験に合格していたことからすれば、事故の翌年から医師として稼働することが確実であるから、事故後医師免許を取得するまでの期間を半年として、その間はアルバイトによる収入を、その後30歳から67歳までは職種別(医師)の平成9年の男子の全年齢平均年収である1199万0100円を基礎収入とし、生活費控除率を40%として、それぞれに該当するライプニッツ係数を乗じて算定する。なお、ライプニッツ係数を乗じるにつき、最初の半年間は、これに対応する0.4819を、その後の37年間は、労働能力喪失期間全体の37.5年のライプニッツ係数16.7905から最初の半年のライプニッツ係数0.4819を差し引いた16.3086を乗じる。
(計算式)
72万円×(1-0.4)×0.4819+1199万0100円×(1-0.4)×(16.7905-0.4819)=1億1753万3226円
⑨事 故 日 平成9年1月
被 害 者 高校卒業後すぐにプロ野球の投手となり一軍で活躍している28歳の男子
事故前収入 プロ入り後に年々上昇し、事故前年は年収6000万円(申告所得額)
労働能力喪失率 20%(傷害)
【逸失利益の算定】
プロ野球選手のような特殊な職業の場合、一般的には20%の労働能力喪失であってもその部位によっては選手生命を失うこともあり、その労働能力喪失率や期間等の認定はある程度個別性を重視せざるを得ないが、ここでは、この点を含めて20%と判断できるものとして算定する。6000万円という高収入は、プロ野球選手だから得られるところ、少なくとも30歳代前半まではプロ野球の投手として活躍できるものと考えられるから、28歳から32歳までの5年間は年収6000万円を基礎収入とし、その後はプロ野球選手を引退することを前提として何か統計的な数字があればともかく、そうでなければ、全年齢平均賃金を基礎収入として67歳までの逸失利益を算定する。なお。ライプニッツ係数を乗じるにつき、引退後の33歳から67歳までの34年間は、労働能力喪失期間全体の39年のライプニッツ係数から17.0170から最初の5年のライプニッツ係数4.3294を差し引いた12.6876を乗じる。
(計算式)
6000万円×0.2×4.3294×575万0800円×0.2×(17.0170-4.3294)=6654万5570円
⑩事 故 日 平成9年5月
被 害 者 大学芸術学部卒業後フリーのカメラマンとして収入を得ている24歳の女子
事故前収入 年収300万円(申告所得額)
労働能力喪失率 27%(傷害)
【逸失利益の算定】
事故前の実収入額は、平成9年の大卒女子の20歳ないし24歳の平均賃金である300万6400円とほぼ等しく、生涯を通じて大卒女子の全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められるから、基礎収入を平成9年の大卒女子の全年齢平均賃金である448万6700円とし、これに、労働能力喪失率の27%、及び、24歳から67歳までの43年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数である17.5459を乗じて算定する。
(計算式)
448万6700円×0.27×17.5459=2125万5261円
⑪事 故 日 平成9年4月
被 害 者 高校卒業後の20歳のころから水商売関係の仕事を始め、28歳で自分のスナックを開店して、従業員はパート1名を使い、ほとんど一人で営業して2年になる30歳の独身の女性
事故前収入 年収840万円(申告所得額)
労働能力喪失率 35%(傷害)
【逸失利益の算定】
スナック経営が相当浮き沈みの激しい職種であり、また、開店してまだ2年という実績や本人の年齢等からみて、今後10年程度はスナック経営により現在と同程度の収入をあげることができる蓋然性があるものと認定し、その後の27年間(40歳以降67歳まで)はそのような蓋然性を認めるのは困難である。しかし、他面において、40歳ころには職業に就いて少なくとも平成9年の女子の全年齢平均賃金である340万2100円程度の収入を得られる蓋然性は認められるから、これに、労働能力喪失率の35%、及び、それぞれの期間に対応するライプニッツ係数を乗じて算定する。なお、ライプニッツ係数を乗じるにつき、40歳以降の27年間は、労働能力喪失期間全体の37年のライプニッツ係数16.7112から最初の10年のライプニッツ係数7.7217を差し引いた8.9895を乗じる。
(計算式)
840万円×0.35×7.7217+340万2100円×0.35×(16.7112-7.7217)=3340万5910円
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