いわゆる三庁共同提言において紹介されている、逸失利益の算定についての具体的な適用例をご紹介致します。ここでは、無職者、失業者の事例をご紹介いたします。
第3 無職者
1 幼児、生徒、学生の場合
⑰事 故 日 平成9年3月
被 害 者 10歳の男子
事故前収入 なし
労働能力喪失率 35%(傷害)
【逸失利益】
基礎収入を平成9年の男子の全年齢平均賃金である575万0800円とし、これに、労働能力喪失率の35%、及び、10歳から67歳までの57年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数である18.7605から就学期間である10歳から18歳までの8年に対応するライプニッツ係数である6.4632を差し引いた12.2973を乗じて算定する。
(計算式)
575万0800×0.35×(18.7605-6.4632)=2475万1759円
⑱事 故 日 平成9年3月
被 害 者 高校3年に在学中で、大学進学希望を有しており、客観的にもその蓋然性が認められる18歳の女子
事故前収入 なし
労働能力喪失率 100%(死亡)
【逸失利益の算定】
基礎収入を平成9年の大卒女子の全年齢平均賃金である448万6700円とし、生活費控除率30%、18歳から67歳までの49年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数である18.1687から大学在学中の4に対応するライプニッツ係数である3.5459を差し引いた14.6228を乗じて算定する。
(計算式)
448万6700円×(1-0.3)×(18.1687-3.5459)=4592万5681円
⑲事 故 日 平成9年3月
被 害 者 大学4年に在学中の24歳の男子
事故前収入 なし
労働能力喪失率 100%(死亡)
【逸失利益の算定】
基礎収入を平成9年の大卒男子の全年齢平均賃金である687万7400円とし、生活費控除率50%、24歳から67歳までの43年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数である17.5459を乗じて算定する。
(計算式)
687万7400円×(1-0.5)×17.5459=6033万5086円
2 その他の場合
⑳事 故 日 平成9年3月
被 害 者 年金により生計を立てていた75歳の男子
事故前収入 年金以外はなし
労働能力喪失率 79%(傷害)
【逸失利益の算定】
就労の蓋然性が認められないので、労働能力の喪失という意味での逸失利益を認定するのは困難である。
第4 失業者
㉑事 故 日 平成9年5月
被 害 者 大学卒業後、電機メーカーの技術者として15年勤務したが、平成9年1月に退社し、再就職先が内定していた40歳の独身男子
予定 収入 年収600万円
労働能力喪失率 100%(死亡)
【逸失利益の算定】
再就職して稼働することが確実であるから、基礎収入を予定収入額とし、生活費控除率50%、40歳から67歳までの27年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数である14.6430を乗じて算定する。
(計算式)
600万円×(1-0.5)×14.6430=4392万9000円
㉒事 故 日 平成9年7月
被 害 者 大学卒業後、不動産会社の営業職に5年勤務していたが、異業種への転職を考えて平成9年3月に中途退社し、求職活動中であった29歳の独身の男子
事故前収入 年収400万円(ただし、平成8年分)
労働能力喪失率 100%(死亡)
【逸失利益の算定】
退職時の実収入額は平成8年の大卒男子の25歳ないし29歳の平均賃金である456万6500円と大きな差異はなく、かつ、平均賃金が高額となる40歳代後半から50歳代に比べて相当程度若年でることを考慮し、生涯を通じて大卒男子の全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められるから、基礎収入を平成9年の大卒男子の全年齢平均賃金である687万7400円とし、生活費控除率50%、20歳代という年齢からすると近い将来就労先を得る蓋然性が高いから、29歳から67歳までの38年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数である16.8678を乗じて算定する。
(計算式)
687万7400円×(1-0.5)×16.8678=5800万3303円
㉓事 故 日 平成8年11月
被 害 者 高校中退後、いわゆるフリーターとしてアルバイト等を転々とし、平成8年7月にパート店員を離職し、求職活動中であった23歳(症状固定時24歳)の男子
事故前収入 過去の実収入額の最高額は平成7年の年収150万円
症状固定日 平成9年3月
労働能力喪失率 35%(傷害)
【逸失利益の算定】
平成7年の実収入額は同年の中卒男子の20歳ないし24歳の平均賃金である321万3900万とかなり差異があり、過去の稼働歴や稼働期間からして、生涯を通じて、平成9年の中卒男子の全年齢平均賃金である510万1700円程度の収入を得られる蓋然性があるとまでは認められない。しかし、平均賃金が高額となる40歳代後半から50歳代に比べて相当程度若年であることを考慮し、平成9年の中卒男子の20歳ないし24歳の平均賃金である327万9700円程度の収入を得られる蓋然性はあるものと認められるから、これを基礎収入とし、これに、労働能力喪失率の35%、及び、20歳代という年齢からすると近い将来就労先を得る蓋然性が高いから、24歳から67歳までの43年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数である17.5459を乗じて算定する。
(計算式)
327万9700円×0.35×17.5459=2014万0850円
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