詐欺罪、電子計算機使用詐欺、準詐欺罪で逮捕されてしまった場合、どのように対応したら良いでしょうか。詐欺罪、電子計算機使用詐欺、準詐欺罪について、刑法では以下のように規定されています。
刑法
(詐欺)
第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(電子計算機使用詐欺)
第246条の2 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。
(準詐欺)
第248条 未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。
(未遂罪)
第250条 この章の罪の未遂は、罰する。
(準用)
第251条 第242条、第244条及び第245条の規定は、この章の罪について準用する。
詐欺罪の客体は他人の占有する動産及び不動産になります。行為は人を欺いて財物を交付させることになります。すなわち①欺罔行為②錯誤③錯誤に基づく処分行為④財物の占有移転⑤財産的損害というながれになります。
欺罔行為は、一般人をして財物・財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせることをいいます。言語によると動作によるとまた、直接的間接的をといません。作為不作為も問いません。不作為の場合にはすでに相手方が錯誤に陥っており、それを認識した行為者には法律上の告知義務が生じます。詐欺の具体例としては、オレオレ詐欺や還付金詐欺、投資詐欺等々の特殊詐欺やつり銭詐欺等々があります。246条2項により、財物のみならず財産上の利益も対象となります。
246条の2は、電子計算機使用詐欺の規定です。コンピュータに対する詐欺的行為は、人を欺く行為ではないので、詐欺罪は成立しません。しかしコンピュータの普及に伴って、コンピュータに対する詐欺的行為の処罰の必要性が生じ、本条が新設されました。
人の事務処理に使用する電子計算機とは、他人がその事務を処理するために使用する電子計算機をいいます。事務の内容は問いませんが娯楽目的のものは含まれません。
虚偽の情報を与えるとは、真実に反する内容の情報を入力させることをいいます。
不正な指令を与えるとは、その電子計算機の使用過程において本来与えられるべきでない指令を与えることをいいます。
財産権の得喪若しくは変更に係る電磁的記録とは、財産権の得喪・変更があったという事実又は財産権の得喪・変更を生じさせるべき事実を記録した電磁的記録であって、取引の場面においてそれが作出されることによってその財産権の得喪・変更がおこなわれるものをいいます。
不実の電磁的記録を作るとは、人の事務処理のように供されている電磁的記録に虚偽のデータを入力して真実に反する内容の電磁的記録を作出することです。判例では、窃取したクレジットカードの名義人氏名等を冒用してこれらをクレジットカード決済代行業者の使用する電子計算機に入力して電子マネーの利用権を取得した行為につき電子計算機使用詐欺罪の成立を認めたものがあります。なお、窃取した他人名義のクレジットカードを店舗等で使用して買い物をした場合には、その店舗を被害者とする通常の詐欺罪が成立します。
虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供するとは、行為者が所持する内容虚偽である電磁的記録を他人の事務処理用の電子計算機に差し入れて使用させることをいいます。他人が遺失したテレホンカードを習得した者が、これを電話機に差し込んで使用する行為は本罪は成立しません。
以上詐欺罪について説明してきましたが、では、詐欺罪等について逮捕された場合にはどのように対応したら良いでしょうか。詐欺罪は財産犯であり、個人の財産を守るための規定です。そうすると、やはり示談をすることが重要ということになります。つまり、騙し取って与えてしまった損害を回復するということです。示談が成立し、被害者が許してくれるのであれば、量刑上は非常に有利になります。詐欺罪のような財産犯は性犯罪の場合等と違い、被害が回復されるなら許すというスタンスの被害者の方が比較的多い事件類型です。なので、被害弁償は積極的にするべきでしょう。示談についてですが、時々被害弁償をするべき被害者が誰なのかで迷うこともあります。例えば、窃取したクレジットカードを使用してブランド鞄を購入したという事案の場合、被害者はその店舗になります。しかし、実質的には店舗はカード会社から支払いを受けており損害は生じていません。また、このような構造のため店舗は被害弁償を受けてくれないことが多いです。そうすると、実質的な被害者はカード会社から請求を受けている真のカード名義人ということになりそうです。しかし、カード名義人もカード会社に報告している場合、請求されないこともあります。そうすると、実質的に損害を受けているのはカード会社でしょうか?カード会社も保険に入っている場合があり、その場合には保険会社が実質的な損害を受けているといえます。このように、誰が実質的に損害を受けているのかを特定しないと有効な被害弁償はできないと思われます。この辺も担当の弁護人とよく相談するべきでしょう。
処分の相場ですが、詐欺の種類や被害額によって大きく幅があります。軽微なものであれば不起訴になったり執行猶予が付いたりします。しかし、昨今社会問題化しているオレオレ詐欺等の特殊詐欺の場合、非常に重く処罰されている傾向があります。すなわち、オレオレ詐欺や投資詐欺等の組織犯罪の場合、あまり報酬を受け取っていない末端構成員で前科がない場合等でも執行猶予を付されることなくいきなり実刑に処される傾向があります。
処分の重さは身柄拘束の長さにも連動しています。オレオレ詐欺や投資詐欺等の組織犯罪の場合、再逮捕が繰り返され、また保釈もなかなか認められずに、裁判が終わるまでの勾留期間が1年を超える事件もあります。オレオレ詐欺等の特殊詐欺の場合、認めていても身柄拘束期間が長期化するおそれがあり、取調べの対応が非常に重要になります。また、示談のタイミングや保釈請求手続等専門的な判断が必要になりますので、弁護士に依頼することをお勧めします。
当然、否認している場合には黙秘等を貫徹するサポートも必要になってきますので、できるだけ早く弁護士に相談されることをお勧めします。
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