交通事故の加害者側、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪等で逮捕されてしまった場合、どのように対応したら良いでしょうか。過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪について、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律では、以下のように規定されています。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(定義)
第一条 この法律において「自動車」とは、道路交通法 (昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第九号 に規定する自動車及び同項第十号 に規定する原動機付自転車をいう。
2 この法律において「無免許運転」とは、法令の規定による運転の免許を受けている者又は道路交通法第百七条の二 の規定により国際運転免許証若しくは外国運転免許証で運転することができるとされている者でなければ運転することができないこととされている自動車を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は当該国際運転免許証若しくは外国運転免許証を所持しないで(同法第八十八条第一項第二号 から第四号 までのいずれかに該当する場合又は本邦に上陸(住民基本台帳法 (昭和四十二年法律第八十一号)に基づき住民基本台帳に記録されている者が出入国管理及び難民認定法 (昭和二十六年政令第三百十九号)第六十条第一項 の規定による出国の確認、同法第二十六条第一項 の規定による再入国の許可(同法第二十六条の二第一項 (日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法 (平成三年法律第七十一号)第二十三条第二項 において準用する場合を含む。)の規定により出入国管理及び難民認定法第二十六条第一項 の規定による再入国の許可を受けたものとみなされる場合を含む。)又は出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の十二第一項 の規定による難民旅行証明書の交付を受けて出国し、当該出国の日から三月に満たない期間内に再び本邦に上陸した場合における当該上陸を除く。)をした日から起算して滞在期間が一年を超えている場合を含む。)、道路(道路交通法第二条第一項第一号 に規定する道路をいう。)において、運転することをいう。
(危険運転致死傷)
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱)
第四条 アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、十二年以下の懲役に処する。
(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
(無免許運転による加重)
第六条 第二条(第三号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、六月以上の有期懲役に処する。
2 第三条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は六月以上の有期懲役に処する。
3 第四条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十五年以下の懲役に処する。
4 前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。
自動車の運転によって、過失により人を死傷させてしまった場合、かつては刑法に規定されていた自動車運転過失致死傷罪で処罰がされていました。これらが、刑法から削除され、独立して上記法律に規定されるようになり、また、内容も充実するようになりました。内容としては、基本的には刑法の時と変わらない、過失運転致死傷罪があり、詳細な要件が規定されている危険運転致死傷罪や、アルコール等影響発覚免脱行為をした場合には加重して処罰される規定や、無免許運転による加重規定が設けられました。
これらの、規定の保護法益は人の身体生命であると考えられます。そのため、これらの罪で逮捕されてしまった場合には、被害者と示談をすることが重要になります。通常であれば、任意保険に加入していると思われるので、損害賠償関係は任意保険会社の担当者に進めてもらうのがよろしいと思います。ただし、謝罪等についてはやはり、本人でしかできないことなので、本人からの謝罪の申し出や、謝罪文の送付等をする必要があると思われます。示談が成立し、被害者が許してくれるという場合には、事故の程度によりますが、不起訴処分になる可能性があります。法5条但書きでは「ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されており、示談や謝罪等の有利な情状を積み重ねることは重要です。起訴されてしまった場合でも、示談が成立していることは有利な情状になります。できるだけスムーズに示談ができればよいので、謝罪等はできるだけ早く申し出るのがよろしいと思います。そのため、弁護士に早く依頼することをお勧めします。弁護士が保険会社と連絡を取りながら、示談の進捗を確認しながら謝罪活動をしていくことになります。任意保険に加入していない場合には、賠償をすべて自己負担しなければならないので大変です。また、保険会社は示談交渉をしてくれないので、被害者から請求された額が正しい額か否かわからないこともあります。任意保険に加入していない場合にも、弁護士に依頼して適正な損害額を計算してもらい示談交渉をしてもらうことをお勧めします。被害者に支払った額のうち一部は自賠責保険から回収できる可能性があります。
通常の過失運転致死傷であれば、任意保険に加入しており、しっかり反省していれば、いきなり実刑になることは少ないです。しかし、危険運転致死傷や飲酒運転、無免許運転等が加わった場合にはいきなり実刑ということも十分にあります。そのような場合には、賠償のみならず、反省の態度を示すために反省文を作成したり、交通安全DVD等を見て感想文を書く等のしっかりした対応をする必要性があります。この点も担当の弁護士としっかり相談することをお勧めします。
過失運転致死傷罪等で、否認している場合、特に過失を否認しているような場合には、主張が通った場合には不起訴や無罪となります。どのような場合に過失の否認の主張が通るかというと、予見可能性結果回避可能性がない場合、つまり避けようと思っても避けられなかった場合があります。具体的には、歩行者がいきなり赤信号無視して飛び出してきた場合、対抗車線を走る車がいきなり事故の車線に突っ込んできた場合、等々、過失否認の主張が通る場合がります。このような場合には警察とは別に弁護人である弁護士が現場に行って実況見分をすることがあります。とくに、見落とされている防犯カメラ等があったりしますので、重要です。また、取調べ対応も非常に重要です。特に過失犯の場合、法律的にも難しい場合が多いです。取調官はプロ中のプロです。知らない間に過失を認めた調書がとられていてもおかしくはありません。できるだけ早く弁護士に相談、依頼することをお勧めします。
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