【在留特別許可の弁護士】在留特別許可に関する裁判例 東京地裁平成18年7月19日

今日は,在留特別許可に関する裁判例をご紹介いたします。
来日時7歳,処分時15歳の中国人女子に対し,在留特別許可を付与しないでされた入管法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決には裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があって違法であるとして,同裁決及びこれに基づく退去強制令書発付処分が取り消された事例です。

<事案の概要>
 中国残留日本人との親子関係を偽装して我が国の在留資格を得た父と共に,平成8年12月29日に一家で来日した原告(当時7歳)が,上陸許可・在留更新許可を受けて日本で生活していたところ,父が日本人との親子関係を偽装した者であり,原告も上陸条件に適合しないにもかかわらず上陸許可を受けていた者であることが判明したとして,被告東京入国管理局入国審査官において,平成16年11月1日付けで上陸許可の取消処分を,被告東京入国管理局長において,同年12月20付けで入管法49条1項に基づく原告の異議の申出は理由がない旨の裁決を,被告東京入国管理局主任審査官において,平成17年1月28日付けで退去強制令書の発付処分を,それぞれ行ったことから,原告が,上記各処分はいずれも違法であるとして,これらの取消しを求めている事案である。

<本件の争点>
①本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えが出訴期間を徒過したか否か。
②本件各上陸許可取消処分が違法であるか否か。
③本件裁決及び本件退令発付処分が違法であるか否か。

<本件判決の内容>
1.争点①本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えが出訴期間を徒過したか否か
行政事件訴訟法14条1項は,取消訴訟の出訴期間は,処分又は裁決があったことを知った日の翌日から起算して3か月であり,同条2項は,出訴期間を不変期間と規定している。
  原告が本件各上陸許可取消処分を知ったのは,平成16年11月1日であり,原告が本件訴えを提起したのは,平成17年3月7日であるから,本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは,原告が当該処分を知った日から起算して3か月が経過した後に提起されていることになる。
 出訴期間の起算点である「処分があったことを知った日」とは,訴えを提起した者が処分があったことを現実に知った日をいい,これについて出訴できることを具体的に認識していることまでを必要とするものではない。そして,原告及びその父母が平成16年11月1日に被告入国審査官から本件各上陸許可取消処分がされた旨を告知された事実に争いはない。
 以上によれば,本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは,出訴期間経過後に提起された不適法なものであるから,却下を免れない。
2.争点②本件各上陸許可取消処分が違法であるか否かについて
(1)判断基準
在留特別許可を付与するか否かの判断は,法務大臣の極めて広範な裁量にゆだねられているのであって,法務大臣は,我が国の国益を保持し出入国管理の公正を図る観点から,当該外国人の在留状況,特別に在留を求める理由の当否のみならず,国内の政治・経済・社会の諸事情,国際情勢,外交関係,国際礼譲等の諸般の事情を総合的に勘案してその許否を判断する裁量権を与えられているというべきである。そして,在留特別許可を付与するか否かに係る法務大臣の判断が違法となるのは,その判断が全く事実の基礎を欠き,又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,法務大臣に与えられた裁量
権の範囲を逸脱し,又はそれを濫用した場合に限られるものと解するのが相当である。
(2)判断基準へのあてはめ
原告は,7歳の来日時から一貫して日本語による初等・中等教育を受けてきたことにより,当初は苦労したものの,日本語の言語能力・日本語による学習能力を年齢相応に着実に身につけていったといえる反面,中国語については,家庭内の日常会話が辛うじて可能であるほか,来日時の小学校1年生程度の能力すら保持できていないことから,中国に帰国したとしても,我が国で受けていたのと同程度の教育に順応することは極めて困難であり,仮にそれが可能であったとしても,小学生程度のレベルにさかのぼって学習をやり直さなければならないなど基礎的な中国語の習得や社会・文化への適応に多大な労力・時間を要することになるのは明らかである。そうすると,我が国に継続して滞在し,日本語での教育を受けながら,進学・就職等を目指している原告にとって,中国へ退去することを強制するのは,著しい不利益を強いるものといわざるを得ない。
加えて,未成年である原告が我が国に在留を続ける場合の経済的基盤,養育・監護の具体的方法に関しては,本件裁決時においても指摘できることとして,仮に父母が帰国し,原告ら兄妹のみが我が国にとどまった場合でも,兄妹で支え合うことが十分想定できたとともに,里親委託の制度が利用でき,養育に適した家庭の下で公的扶助を受けながら学業を続けることが可能であったこと,多数の支援者が求める会を結成し,相当額の寄付を集めるなど物心両面の組織的な援助が見込める状況にあったこと,母・Bが受けられる交通事故の保険金等,学費や生活費に振り向けることができる相当額の原資もあり,原告ら兄妹にはアルバイトの経験があって,そこから収入を得ることも可能であったことが認められる
以上によれば,原告において,我が国に在留し,通学しながら日本語で学習を続ける利益は,十分保護に値するものというべきであり,原告の生活状況,学習状況及び言語能力,さらには,中国に帰国した場合に生ずるであろう不利益を適正に認定・評価していれば,原告に対しては,当然に在留特別許可を付与すべきものであったと解するのが相当である。
  したがって,原告に在留特別許可を付与しないでした本件裁決は,全く事実の基礎を欠き,又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであって,在留特別許可を付与するか否かについて法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入国管理局長に与えられた裁量権が極めて広範なものであることを前提としても,本件裁決は裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるものであって違法というべきである。
3.争点③本件裁決及び本件退令発付処分が違法であるか否かについて
 本件裁決の通知を受けた被告主任審査官は,入管法49条5項により,速やかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるとともに同法51条の規定による退去強制令書を発付しなければならないものとされているのであるから,本件裁決が違法である以上,これに従ってされた本件退令発付処分も違法であるといわざるを得ない。

<コメント>
本判決は,本件上陸許可取消処分の取消しを求める訴えについては,出訴期間が経過した後に提起された不適法なものであるとして却下した。
本件裁決の取消請求については,退去強制事由がある外国人に対し在留特別許可を付与するか否かの判断は極めて広範な裁量にゆだねられているとしつつ,原告は中国語の日常会話は可能であるものの,学校教育のほとんどを日本語で受けているため,帰国してもその対応に困難が伴うこと,裁決時は15歳に達しており,高等学校の入試もこれと近接した時期に行われて,その後合格していること等の事情があることから,在留特別許可を付与すべきであり,本件裁決は裁量権の範囲を逸脱・濫用した違法なものであると結論づけ,本件裁決及びこれを基にした本件退令発付処分を取り消したものである。
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