中国人の刑事弁護(収賄の罪、賄賂、贈賄)

収賄、贈賄の罪で逮捕されてしまった場合には、どのように対応したら良いでしょうか。収賄、贈賄の罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(収賄、受託収賄及び事前収賄)

第197条  公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。

2  公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。

(第三者供賄)

第197条の2  公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。

(加重収賄及び事後収賄)

第197条の3  公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処する。

2  公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。

3  公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。

(あっせん収賄)

第197条の4  公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。

(没収及び追徴)

第197条の5  犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

(贈賄)

第198条  第197条から第197条の4までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。

 

197条1項前段は単純収賄罪の規定です。主体は公務員です。行為は賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をすることです。収受とは、賄賂を取得することをいいます。収受の時期は職務の執行の前後を問いません。要求とは、賄賂の供与を要求することをいい、相手方がこれに応じなくても要求をおこなった時点で既遂となります。約束とは贈賄者と収賄者との間で将来賄賂を授受すべきことについて合意することをいいます。約束が行われれば既遂となり要求を撤回したり解除しても犯罪は成立します。賄賂を要求・約束して収受した場合、包括して単純収賄罪一罪が成立します。

197条1項後段は、受託収賄罪の規定です。本罪は請託を受けたことによって単純収賄罪よりも重く罰するもので、同罪の加重類型です。請託とは、公務員に対し、職務に関し一定の職務行為を依頼することをいいます。正当な職務の依頼でもよく、請託の対象となる職務行為はある程度具体的なものであることを要します。受けるとは、依頼(請託)を承諾することです。公務員が将来担当するかもしれない職務であっても賄賂罪の職務に該当しえます。

197条2項は事前収賄罪の規定です。主体は公務員になろうとするものです。行為はその担当すべき職務に関し、請託を受けて賄賂を収受・要求・約束することです。その担当すべき職務とは、公務員に就任した場合に担当することが予想される職務をいい、職務は相当程度具体的であることを要します。「関し」とは、担当すべき職務行為またはそれと密接に関係がある行為と賄賂との間に対価関係が認められるべきことを意味します。本罪は行為者が公務員になってはじめて処罰されます。

197条の2は第三者供賄罪の規定です。第三者を介して間接的に職務に関連して利益を得る脱法的行為を取り締まる規定です。主体は公務員です。行為は、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をすることです。第三者とは、当該公務員以外の者をいいます。本罪を教唆・ほう助した者を含みます。第三者は当該利益が賄賂であることを認識していなくてよいです。賄賂は、当該公務員の職務行為との間に対価関係があることが必要です。供与とは、利益を受け取らせることいいます。

197条の3第1項、2項は加重収賄罪の規定です。本条は収賄行為とともに、それに関連して職務違反の行為がおこなわれたことを理由にこれを重く処罰するものです。主体は公務員及び公務員になろうとするも者です。1項の行為は、単純収賄罪・受託収賄罪・事前収賄罪・第三者供賄罪を犯し、よって不正な行為をし、または相当な行為をしないことになります。2項の行為は、職務上不正な行為をし、または相当な行為をしなかったことに関し、賄賂を収受・要求・約束し、または第三者にこれを供与させ、その供与を要求・約束することです。

197条の3第3項は、事後収賄罪の規定です。主体は過去に公務員であった者です。行為は、在職中請託を受けて職務違反行為をし、退職後にこれに関して収受・要求・約束をすることになります。

197条の4はあっせん収賄罪の規定になります。主体は公務員です。単なる私人として行為するときは主体とならないが、公務員の地位ないし立場で行為する限り積極的にその地位を利用しなくても本罪の主体となりえます。行為はあっせんすることです。あっせんとは、一定の事項について両当事者間の間に入って仲介することをいいます。他の公務員の職務について違法な行為の働きかけがあった場合だけでなく、他の公務員の裁量判断に不当な影響を及ぼした場合も本罪が成立します。賄賂は、職務に対する対価ではなく、あっせんすることの対価です。

197条の5は、没収及び追徴の規定です。本条の意義は、収賄者に不法の利益を保有させないことにあります。没収・追徴に関する19条、19条の2の特則であり、必要的である点で異なります。

198条は贈賄罪に関する規定です。主体は非公務員であることを原則としますが、公務員であっても単なる私人として行う場合には本罪の主体となります。行為は、賄賂の供与・申込み・約束をすることです。供与とは、賄賂を相手方に収受させる行為をいいます。申し込みとは、収受を促すことをいいます。相手方に賄賂たることを認識しうる事情のもとに賄賂の収受を促せばたり、実際に相手方がその意思表示を、または、その利益が賄賂であることを認識する必要はありません。約束とは、将来において賄賂を供与することについて公務員と合意に達することをいいます。

 

以上、収賄罪、贈賄罪等について説明をしてきましたが、収賄罪、贈賄罪で逮捕されてしまった場合には、どのような弁護活動が有効でしょうか。この点、これらの罪の保護法益は職務の公正とこれに対する社会一般の信頼であると解されています。つまり個人的法益ではなく社会法益であるといえます。そうすると、示談をするというのは実効性がないといえます。そこで、不正な利益を保有している場合にはそれを吐き出すという意味合い、また、反省を示す意味で、贖罪寄付という手段が考えられます。贖罪寄付の効果については過大な期待はできませんが、贖罪寄付をしたことは一定の有利な事情にはなると考えられます。

 

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