自賠責保険制度の概要

自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法で定められた自動車損害賠償責任保険または自動車損害賠償責任共済のことで、自動車の運行によって死傷した被害者がその人身損害の全部または一部の賠償を受けられるなど、被害救済が図られるように、原則すべての車両に加入が義務付けられている強制保険です。このように人身損害を対象としており、物損はその対象にはなりません。強制保険であるため自動車は自賠責に加入しなければならず、加入せずに運行の用に供した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の刑事処罰を受けます。また、免許停止の行政処分も受けます。

 自賠責は保険金額に上限があり、この上限内で支払基準が定められています。例えば、傷害のみの場合上限は120万円であり、休業損害は1日5700円であり、慰謝料は1日4200円となっています。

 また、自賠責保険は被害者救済のための制度なので、被害者に過失があっても、加害者に過失がある限り、被害者に有利な減額割合となっています。具体的には、被害者の過失割合が7割未満の場合には減額されません。また、傷害に係るものについては、被害者の過失割合が7割以上10割未満の場合には2割減額されます。後遺障害又は死亡に係るものは、7割以上8割未満の場合には2割減額、8割以上9割未満の場合には3割減額、9割以上10割未満の場合には5割減額となっています。ただ、10割被害者側に過失がある場合には支払われません。

 自賠責には、被害者の当座の治療費や生活費を賄うための仮渡金の制度があります。被害者の方で請求すると、遅滞なく支払われることになります。仮渡金の金額については、死亡の場合は290万円となります。

脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの、上腕または前腕の骨折で合併症を有するもの、大腿または下腿の骨折、内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの、14日以上病院に入院することを要する傷害で医師の治療を要する期間が30日以上のもの、これらの場合は40万円となります。

 脊柱の骨折、上腕または前腕の骨折、内臓の破裂、病院に入院することを要する傷害で医師の治療を要する期間が30日以上のもの、14日以上病院に入院することを要する傷害、これらの場合は20万円となります。

 11日以上医師の治療を要する傷害は5万円となります。

 自賠責保険の請求手続は、賠償を実施した加害者が自賠責に請求する加害者請求と、被害者自身が行う被害者請求があります。加害者が任意保険に加入している場合には、任意保険が一括払いをして、後で加害者請求することになります。加害者が任意保険に加入していない場合や、自分自身で後遺障害認定手続をしたい場合には被害者請求をすることになります。後遺障害等級認定も自賠責で行われますので、後遺障害等級認定を受けたい場合には、後遺障害診断書も提出する必要があります。

 自賠責の保険金の支払に係る決定等に対しては異議申立を行うことができます。異議申立てに回数制限はありませんが、時効がありますので注意して下さい。また、紛争処理機構に対して紛争処理の申請ができます。この手続は一度しか利用できず、最終的に納得できない場合には裁判しかありません。

 

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