退去強制事由(入管法24条4号)、中国人の刑事弁護と入管

入管法24条4号では、以下のように退去強制事由が規定されています。まずは、条文をご紹介後解説します。

 

第二十四条  次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。

四  本邦に在留する外国人(仮上陸の許可、寄港地上陸の許可、船舶観光上陸の許可、通過上陸の許可、乗員上陸の許可又は遭難による上陸の許可を受けた者を除く。)で次のイからヨまでに掲げる者のいずれかに該当するもの

イ 第十九条第一項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く。)

ロ 在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(第二十条第五項の規定により本邦に在留することができる期間を含む。第二十六条第一項及び第二十六条の二第二項(第二十六条の三第二項において準用する場合を含む。)において同じ。)を経過して本邦に残留する者

ハ 人身取引等を行い、唆し、又はこれを助けた者

ニ 旅券法 (昭和二十六年法律第二百六十七号)第二十三条第一項 (第六号を除く。)から第三項 までの罪により刑に処せられた者

ホ 第七十四条 から第七十四条の六の三 まで又は第七十四条の八 の罪により刑に処せられた者

ヘ 第七十三条 の罪により禁錮以上の刑に処せられた者

ト 少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)に規定する少年で昭和二十六年十一月一日以後に長期三年を超える懲役又は禁錮に処せられたもの

チ 昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法 、大麻取締法 、あへん法 、覚せい剤取締法 、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律 (平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章 の規定に違反して有罪の判決を受けた者

リ ニからチまでに掲げる者のほか、昭和二十六年十一月一日以後に無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。

ヌ 売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接に関係がある業務に従事する者(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く。)

ル 次に掲げる行為をあおり、唆し、又は助けた者

(1) 他の外国人が不法に本邦に入り、又は上陸すること。

(2) 他の外国人が偽りその他不正の手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、又は前節の規定による許可を受けること。

オ 日本国憲法 又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入している者

ワ 次に掲げる政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入し、又はこれと密接な関係を有する者

(1) 公務員であるという理由により、公務員に暴行を加え、又は公務員を殺傷することを勧奨する政党その他の団体

(2) 公共の施設を不法に損傷し、又は破壊することを勧奨する政党その他の団体

(3) 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体

カ オ又はワに規定する政党その他の団体の目的を達するため、印刷物、映画その他の文書図画を作成し、頒布し、又は展示した者

ヨ イからカまでに掲げる者のほか、法務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行つたと認定する者

 

まず、イについてですが、入管法19条1項は、就労することができない、または就労活動の内容が制限されている在留資格を

有する外国人が資格外活動を得ずに就労することを禁止しています。しかし、退去強制手続との関係では、禁止されている就労活動を行った場合がすべて退去強制事由に該当するわけではありません。入管法24条4号イでは「専ら行っていると明らかに認められる者」と規定されており、この「専ら行っている」の解釈が問題となります。

 この点、東京地裁の裁判例ではこのように判断しています。「留学の在留資格を有する外国人が、入管法24条4号イの定める専業活動要件に当たるというためには、原告の本邦における学生としての生活及び就労等の状況、就労に至った経緯、学費及び生活費の支出状況、本国からの送金の状況及び使途等を総合考慮して在留を正当化する本来の在留資格である留学が実質的に変更されたものと認められるか否かという観点から判定」すべきである旨を述べ、入管法19条1項に違反する就労活動をしつつも真面目に勉学に励んでいた留学生について退去強制事由に該当しないと判断したものがあります。資格外活動の場合には退去強制事由に該当するか否か争いになる場合が多いです。しかし、専らの要件を満たさない場合であっても、資格外活動を理由に入管法73条に基づき禁固以上の刑に処せられると別途退去強制事由に該当することになります。

ロはいわゆるオーバーステイの場合ということになります。ㇵは有罪判決は要件となっていません。

二については刑に処せられたものとなっており、有罪判決の確定が必要です。なお、執行猶予判決も含みます。

ホは入管法の集団密航に係る罪、他人の不法入国等の実行を容易にする目的での不正な旅行証明書または身分証明書の入手・所持・提供等、不法入国者の蔵匿・隠避の罪で刑に処せられたものであり、有罪判決の確定が必要です。なお、執行猶予判決も含まれます。

へは上述のように、資格外活動の罪に基づいて禁固以上の刑を受けた場合になります。なお、

入管法73条は以下のように規定されています。

 

第七十三条  第七十条第一項第四号に該当する場合を除き、第十九条第一項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行つた者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。

 

トは刑に処せられたものとなっており、有罪判決の確定が必要になります。

チは薬物犯罪に関する規定で、有罪判決(執行猶予を含む)の確定が必要です。

リは刑罰を受けた者全般に関する規定です。無期又は1年を超える懲役または禁錮刑に処せられた者となっています。ただし、刑の全部の執行猶予を受けた者等は除外されています。有罪判決の確定が必要です。

ヌは売春関係に関する規定です。これについては有罪判決等は要件になっていません。

ルは不法入国不法上陸の教唆、ほう助に関する規定です。これについても有罪判決等は要件となっていません。

オ、ワ、カは暴力主義的破壊活動者に関する規定です。これについても有罪判決等は要件となっていません。ヨは利益公安条項該当者です。これについても、有罪判決等は要件となっていません。

 

以上のように、有罪判決を受けたことが退去強制事由になっているものがあります。退去強制事由に該当する場合には退去強制手続が進行し、退去強制事由事態に争いはないが、日本での在留を継続したいという場合には在留特別許可を目指すことになります。このような場合、刑事裁判の段階から在留特別許可を視野に入れて弁護活動をする必要があります。そのため、できれば、当初から刑事弁護、入管事件の双方を取り扱う弁護士に依頼すると良いと思われます。

 

中国人、外国人の退去強制、在留特別許可、逮捕、刑事弁護に関するご相談は、中国語の話せる弁護士永田洋子にご相談ください。

電話番号は0800-700-2323

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