外国人と年金保険

1 国民年金

 国民年金は、国民年金法7条1項1号で「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者」に原則として被保険者の資格を認めており、外国人でも被保険者となる強制加入制度です。なお、国民年金には居住要件があるところ(国民年金法7条1項)、ここでいう「居住」とは、適法な在留資格を有した上で日本国内に居住していることを指すというのが政府見解です。したがって、在留資格を持たない外国人は支給を受けられないのが実情です。

2 厚生年金

 厚生年金は、会社のような強制適用事業所の従業員で7歳未満の者が対象であり、強制加入制度です。厚生年金加入者は、同時に国民年金にも加入している仕組みになっています。

 国民年金には居住要件がありますが、厚生年金にはそのような要件はなく(厚生年金法9条)、常時5人以上の従業員を雇う強制適用事業所(厚生年金法6条)の従業員の地位があれば、原則として厚生年金を受給することができます。しかkし、保険料の負担を抑えるために外国人について加入手続をとっていないケースがあるため、加入手続の有無を雇用先に確認する必要があります。

3 合算対象期間

 国民年金は1961年4月1日から1981年12月31日までの間は日本国民以外は加入できませんでした。しかし、1982年1月1日以降は、日本国内に住所を有していれば、被用者年金制度の加入者以外はすべて国民年金に加入できるようになりました。そこで、日本国民でないことを理由に国民年金に加入できなかった者にも年金権を保障するために、その期間を受給資格期間の計算に入れることができるようになりました。これを、合算対象期間といいます。合算対象期間は年金額自体には反映されないので「カラ期間」とも呼ばれています。

4 脱退一時金制度と通算制度

  国民年金制度は主として被保険者の老齢、障害、死亡に対して、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金が支給されます。このうち、障害年金と遺族年金は長期の加入を必要としていませんが、老齢基礎年金の受給には25年の加入期間を必要とするため、帰国する場合に支払った保険料が無駄になってしまわないかという問題があります。そこで検討する必要があるのが脱退一時金制度と通算制度です。

 脱退一時金制度は、①日本国内に住所を有していないこと、②国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間が6か月以上であること、③年金が受けられないこと、④帰国後2年以内に請求を行うこと、という要件を満たす場合に、保険料のうちの一定額の給付を受けることができる制度です(国民年金法附則9条の3の2)。請求は日本年金機構にすることになります。

 通算制度とは、日本と社会保障協定を締結している国に帰国する場合に、日本と当該国との年金加入期間を相互に通算して年金受給権を獲得することができる制度です。ただし、脱退一時金を受給した場合には、その期間を年金加入期間に通算することはできません。したがって、脱退一時金の支給を受けるか、通算制度を利用するかは、金額を考慮して決めるべきです。

 

外国人の年金制度・手続きに関するご相談は、元行政書士で入管ビザ事件を多く取り扱っている弁護士永田洋子にご相談ください。

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