Archive for the ‘交通事故コラム’ Category

後遺障害等級の認定手続き

2017-04-16

後遺障害とは、怪我が治った時に身体に存する障害、つまり、治療を継続してもこれ以上症状が改善する見込みがなくなった段階(症状固定)に残った身体的・精神的な毀損状況をいいます。症状固定までについては傷害についての損害の問題、症状固定後は後遺障害の損害の問題となりますので、症状固定は重要な意味を持ちます。症状固定は担当医が基本的には決めますが、法的評価の問題でもあるので、保険会社が症状固定として治療を打ち切ってくることがあり、争いとなることも少なくありません。保険会社から治療打ち切りと言われて弁護士に相談するという被害者の方もいます。

 自賠責保険では、自動車損害賠償保障法施行令2条、別表後遺障害別等級表によって等級認定を行い、裁判でも基本的には同様の等級認定を行います。自賠責保険では、当てはめに際して、労災保険における障害認定基準に準拠するものとされており、裁判例の大半もこの基準に基づいて等級評価を行っています。ただし、自賠責保険と違う等級を認定する裁判例もあります。実務上重要な書籍として「労災補償 障害認定必携」があります。後遺障害認定を目指す場合には同書籍をよく検討して、後遺障害診断書を取得したり、意見書を作成する必要があるといえます。

 後遺障害に対する、自賠責保険金を受領するには、損害保険料率算出機構による等級認定を受ける必要があります。認定手続には、相手方任意保険会社が行う事前認定と被害者自身で行う被害者請求の方法で行う手続があります。事前認定の場合には、手続をほぼ全て相手保険会社が行うため、手続の負担がなく楽というメリットがあります。しかし、相手保険会社はあくまで相手方です。後遺障害が認定された場合、損害賠償の負担は増えますので、相手方保険会社が積極的に後遺障害認定に動いてくれるかは疑問です。被害者請求した場合には、手続負担は大きいですが、ご自身で十分な準備をして申請を行えますので、たとえ認定されなくても、事前認定で認定されなかった場合と比べて満足度はあると思います。手続が煩雑な場合には弁護士に依頼すると良いでしょう、弁護士に依頼した場合には、各種書類の他に意見書を添付します。

 事前認定をするにしても、被害者請求をするにしても、後遺障害認定を目指す場合には、「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」を医師に作成してもらう必要があります。書式は病院に備え付けられている場合もありますし、ない場合には自賠責窓口保険会社に問い合わせれば貰えます。その際には、被害者請求に必要な書類(診断書、診療報酬明細書)の他に、レントゲン画像、MRI、CT等の画像データも一緒に提出すると良いでしょう。仮に提出していなくても、自賠責の調査事務所から提出を求められることがほとんどです。

被害者請求の場合には、提出書類を揃えるのが意外と大変です。自賠責窓口保険会社から書式やパンフレットが貰えますので、それに沿って作成、収集していけばいいのですが、意外とこれが大変です。なので、被害者請求する場合には弁護士に依頼してサポートしてもらうのが良いと思います。

 後遺障害認定にとって後遺障害診断書は非常に重要な書類です。しかし、医師は治療のプロであって、後遺障害認定のプロではないため、よく記載が漏れている場合があります。そのため、弁護士に依頼して、後遺障害診断書を取得する段階からサポートしてもらう方が良いでしょう。内容虚偽の診断書を作成してもらうわけにはいけませんが、しっかりとした適正な検査等をしてもらい、適切な記載をしてもらう必要があります。非常に重要な部分なのに空白になっていることもあり、これでは認定は難しいと思われます。

 後遺障害認定は提出してから数カ月程度の時間がかかります。早くても1月はかかるでしょう。後遺障害認定がなされると、窓口保険会社に通知がいき、保険会社から本人に通知がいき、保険金の支払いがなされます。非該当の場合には非該当の通知がいきます。この認定に不服がある場合には、異議申立てをすることができます。書式はありませんが当職ですと異議申立書を作成して、新たな証拠等を提出します、あらたな証拠としては、医療照会書等の医師の意見が記載されているもの、本人や家族の陳述書、レントゲン、MRI、CT等の画像データ等々があります。

 後遺障害が認定されるか否かは、保険金額が大きく変わるため非常に重要です。例えば、自賠責においては、等級に応じて自賠責での保険金の支払上限額が大きく変わります。傷害の場合は120万円ですが、後遺障害が認定されると、後遺障害14級の場合は75万円、後遺障害13級の場合は139万円、後遺障害12級の場合は224万円、後遺障害11級の場合は331万円、後遺障害10級の場合は461万円、後遺障害9級の場合は616万円、後遺障害8級の場合は819万円、後遺障害7級の場合には1051万円、後遺障害6級の場合は1296万円、後遺障害5級の場合は1574万円、後遺障害4級の場合は1889万円、後遺障害3級の場合は2219万円、後遺障害2級の場合は2590万円、後遺障害1級の場合は3000万円が上限として加算されます。

 後遺障害等級認定、被害者請求は、専門家である弁護士に依頼することをお勧めします。

 

中国人の交通事故、自賠責請求、後遺障害認定、示談交渉は、中国語が話せる弁護士永田洋子にご相談ください。

電話番号は0800-700-2323(フリーコール)

自賠責に対する不服申立手段

2017-04-15

自賠責の後遺障害認定に係る判断やそれに基づく損害賠償額の決定に対して不服がある場合には、保険会社に対して異議申立てを行うことができます。異議申立ては事前認定のときは相手保険会社に対して、被害者請求の時には自賠責保険会社に対して、異議申立書を提出することになります。異議申立書には決められた書式はありませんが、当職ですと異議申立書と題した書面に、異議申立の趣旨や理由を記載し、また新たな診断書や医療照会書等の証拠を添付して提出します。異議申立てをすると回答がきますが、これに不服がある場合には、何度でも異議申立をすることができます。つまり異議申立に回数制限はないことになります。しかし、新事実がないのに何度も異議申立をするのは時間の無駄と言えるでしょう。

 異議申立てをしても認定が覆らなかった場合、一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構(紛争処理機構)に当該紛争の調停(紛争処理)の申請を行うことができます。しかし、以下のような場合には申請は受理されません。

・民事調停または民事訴訟が係属中である場合

・他の期間に申し出ている斡旋等について当該調停を開始するため当該機関に中断または中止する旨を連絡していない場合

・不当な目的で申請したと認められる場合

・権利または権限なくして申請したと認められる場合

・弁護士法72条に違反する合理的な疑いがあると認められた場合

・自賠責保険から支払われる支払金額に影響がない場合

・紛争処理機構によって既に紛争処理を行った紛争である場合

・自賠責保険への請求がない事件に係る紛争であると認められる場合

・その他、紛争処理機構で紛争処理を実施することが適当でない場合

 

紛争処理の申請手続は、以下の事項を記載した申請書を紛争処理機構に提出します。

・当事者およびその代理人の氏名または名称及び住所

・紛争処理を求める事項

・紛争の問題点、交渉経過の概要および請求の内容

・事故の状況の概要その他紛争処理を行うに際し、参考となる事項

・申請の年月日

・他の期間において法律相談、斡旋等を行っている場合はその機関名

申請書には証拠書類等を添付して提出します。

 紛争処理は自賠責の判断の根拠となった資料などに基づいて行われます。必要があれば、証拠の収集等の独自調査が行われることもあります。民事調停のように当事者と面談して話を聴くということはせずに、基本的には当事者の主張書面等の書面審査が中心となります。

 紛争処理機構の調停結果に不服がある場合でも、最後の申請をすることはできません。この場合には民事訴訟を提起することが最終手段となります。また、人身傷害保険の事前認定の場合には紛争処理機構に紛争処理の申請はすることができません。

 

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自賠責請求の手続(被害者請求)

2017-04-14

自賠責に対する請求には被害者請求と加害者請求があると以前にお話ししましたが、ここでは被害者本人が自賠責の窓口保険会社に対してする、被害者請求の手続を解説します。

 自賠責に対して直接請求する被害者請求といっても通常はどのようにして良いのかわからないものです。そこで、まずは、交通事故証明書を取得しましょう。交通事故証明書は当該事故を処理してくれた管轄の警察署にいけば発行してくれます。そして、その交通事故証明書を見ると、相手方の欄に自賠責の窓口保険会社が記載されています。そこに電話をして、書式や説明書きが書いてあるパンフレットを送付してもらってください。あとは、そのパンフレットに記載のある通りに書類を集めて、その窓口保険会社に提出すれば被害者請求をしたことになります。

 被害者請求では具体的には以下の書類を提出することになります。

・自動車損害賠償責任保険保険金支払請求書兼支払指図書

・診断書又は死亡検案書

・死亡事故の場合には戸籍謄本

・交通事故証明書

・事故発生状況報告書

・診療報酬明細書

・通院交通費明細書

・付添看護自認書または看護料領収書

・休業損害証明書

・請求者の印鑑証明書

・第三者に委任する場合には、委任状及び委任者の印鑑証明書

基本的には原本が必要になりますので、注意が必要です。相手保険会社等が既に集めている場合には、その写しをまとめてもらい、原本と相違なしの印を押してもらう等すると、書類の収集は簡単になります。しずれにしても、ご自身でやるにはやや煩雑なので、被害者請求手続は弁護士に依頼すると良いと思います。

 傷害のみの場合には上記の書類で足りますが、後遺障害の等級認定も求める場合には、この被害者請求の手続を利用します。その際は、後遺障害診断書も添付して提出することになります。また、この時にはレントゲン画像やMRIの画像データの提出も求められることがほとんどですので、一緒に提出すると良いと思います。

 後遺障害が認定された場合、等級に応じて自賠責での保険金の支払上限額が大きく変わります。傷害の場合は120万円ですが、後遺障害が認定されると、後遺障害14級の場合は75万円、後遺障害13級の場合は139万円、後遺障害12級の場合は224万円、後遺障害11級の場合は331万円、後遺障害10級の場合は461万円、後遺障害9級の場合は616万円、後遺障害8級の場合は819万円、後遺障害7級の場合には1051万円、後遺障害6級の場合は1296万円、後遺障害5級の場合は1574万円、後遺障害4級の場合は1889万円、後遺障害3級の場合は2219万円、後遺障害2級の場合は2590万円、後遺障害1級の場合は3000万円が上限として加算されます。そのため、後遺障害が認定されるか否かは非常に重要ですので、後遺障害の認定を求める際には、後遺障害の内容を精査し、医師に後遺障害診断書の作成をしてもらう段階から弁護士に助言をもらうのが良いと思います。というのも、医師は治療のプロですが、後遺障害認定のプロではないので、時々、認定のために重要な検査が漏れている場合があります。そうして、後遺障害診断書を作成してもらったうえで、弁護士の意見書を添付して、提出すると良いかと思います。

 

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自賠責保険の支払基準

2017-04-13

自賠責保険は法律に基づいて加入が義務付けられている強制保険であり、ほぼ全ての車両が加入しています。しかし、必ずしも人身損害の全てを保障してくれるというものではなく、上限額が設定されており、この上限額までしか保障してもらえません。具体的には傷害のみの場合は120万円ですが、後遺障害が認定されると、後遺障害14級の場合は75万円、後遺障害13級の場合は139万円、後遺障害12級の場合は224万円、後遺障害11級の場合は331万円、後遺障害10級の場合は461万円、後遺障害9級の場合は616万円、後遺障害8級の場合は819万円、後遺障害7級の場合には1051万円、後遺障害6級の場合は1296万円、後遺障害5級の場合は1574万円、後遺障害4級の場合は1889万円、後遺障害3級の場合は2219万円、後遺障害2級の場合は2590万円、後遺障害1級の場合は3000万円が上限として加算されます。また、死亡の場合も3000万円となります。さらに、この上限額を前提として、細かく支払基準が定められていますのでご紹介させて頂きます。

 

 傷害による損害は、積極損害(治療関係費、文書料その他の費用)、休業損害及び慰謝料とする。

1 積極損害

(1)治療関係費

 ①応急手当費

  応急手当に直接かかる必要かつ妥当な実費とする。

 ②診察料

  初診料、再診料又は往診料にかかる必要かつ妥当な実費とする。

 ③入院料

  入院料は、原則としてその地域における普通病室への入院に必要かつ妥当な実費とする。ただし、被害者の傷害の態様等から医師が必要と認めた場合は、上記以外の病室への入院に必要かつ妥当な実費とする。

 ④投薬料、手術料、処置料等

  治療のために必要かつ妥当な実費とする。

 ⑤通院費、転院費、入院費又は退院費

  通院、転院、入院又は退院に要する交通費として必要かつ妥当な実費とする。

 ⑥看護料

 ア 入院中の看護料

   原則として12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合に1日につき4100円とする。

 イ 自宅看護料又は通院看護料

   医師が看護の必要性を認めた場合に次のとおりとする。ただし、12歳以下の子供の通院等に近親者が付き添った場合には医師の証明は要しない。

 (ア)厚生労働大臣の許可を受けた有料職業紹介所の紹介による者

    立証資料等により必要かつ妥当な実費とする。

 (イ)近親者等

    1日につき、2050円とする。

 ウ 近親者等に休業損害が発生し、立証資料等により、ア又はイ(イ)の額を超えることが明らかな場合は、必要かつ妥当な実費とする。

 ⑦ 諸雑費

   療養に直接必要のある諸物品の購入費または使用料、医師の指示により摂取した栄養物の購入費、通信費等とし、次のとおりとする。

 ア 入院中の諸雑費

   入院1日につき1100円とする。立証資料等により1日につき1100円を超えることが明らかな場合は、必要かつ妥当な実費とする。

 イ 通院又は自宅療養中の諸雑費

   必要かつ妥当な実費とする。

 ⑧柔道整復等の費用

  免許を有する柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする。

 ⑨義肢等の費用

 ア 傷害を被った結果、医師が身体の機能を補完するために必要と認めた義肢、歯科補てつ、義眼、眼鏡(コンタクトレンズを含む。)、補聴器、松葉杖等の用具の政策等に必要かつ妥当な実費とする。

 イ アに掲げる用具を使用していた者が、傷害に伴い当該用具の修繕又は再調達を必要とするに至った場合は、必要かつ妥当な実費とする。

 ウ ア及びイの場合の眼鏡(コンタクトレンズを含む)のの費用については、50000円を限度とする。

 ⑩ 診断書等の費用

   診断書、診療報酬明細書等の発行に必要かつ妥当な実費とする。

(2)文書料

   交通事故証明書、被害者側の印鑑証明書、住民票等の発行に必要かつ妥当な実費とする。

(3)その他の費用

   (1)治療関係費及び(2)文書料以外の損害であって事故発生場所から医療機関まで被害者を搬送するための費用等については、必要かつ妥当な実費とする。

2 休業損害

(1)休業損害は、休業による収入の減少があった場合又は有給休暇を使用した場合に1日につき原則として5700円とする。ただし、家事従業者については、休業による収入の減少があったものとみなす。

(2)休業損害の対象となる日数は、実休業日数を基準とし、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して治療期間の範囲内とする。

(3)立証資料等により1日につき5700円を超えることが明らかな場合は、自動車損害賠償保障法施行令第3条の2に定める金額を限度として、その実額とする。

3 慰謝料

(1)慰謝料は、1日につき4200円とする。

(2)慰謝料の対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とする。

(3)妊婦が胎児を死産または流産した場合は、上記のほかに慰謝料を認める。

 

後遺障害による損害は、逸失利益及び慰謝料等とし、自動車損害賠償保障法施行令第2条並びに別表第1及び別表第2に定める等級に該当する場合に認める。等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。

1 逸失利益

  逸失利益は、次のそれぞれに掲げる年間収入額又は年相当額に該当等級の労働能力喪失率(別表Ⅰ)と後遺障害確定時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数(別表Ⅱ-1)を乗じて算出した額とする。ただし、生涯を通じて全年齢平均給与額(別表Ⅲ)の年相当額を得られる蓋然性が認められない場合は、この限りでない。

(1)有職者

   事故前1年間の収入額と後遺障害確定時の年齢に対応する年齢別平均給与額(別表Ⅳ)の年相当額のいずれか高い額を収入額とする。ただし、次の者については、それぞれに掲げる額を収入額とする。

 ① 35歳未満であって事故前1年間の収入額を立証することが可能な者

   事故前1年間の収入額、全年齢平均給与額の年相当額及び年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額

 ②事故前1年間の収入額を立証することが困難な者

 ア 35歳未満の者

   全年齢平均給与額の年相当額又は年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額。

 イ 35歳以上の者年齢別平均給与額の年相当額

 ③ 退職後1年を経過していない失業者(定年退職者等を除く)

   以上の基準を準用する。この場合において、「事故前1年間の収入額」とあるのは、「退職前1年間の収入額」と読み替えるものとする。

(2)幼児・児童・生徒・学生・家事従業者

   全年齢併給給与額の年相当額とする。ただし、58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は、年齢別併給給与額の年相当額とする。

(3)その他働く意思と能力を有する者

   年齢別平均給与額の年相当額とする。ただし、全年齢平均給与額の年相当額を上限とする。

2 慰謝料等

(1)後遺障害に対する慰謝料等の額は、該当等級ごとに次に掲げる表の金額とする。

 ① 自動車損害賠償保障法施行令別表第1の場合

 第1級  1600万円

 第2級  1163万円

 ② 自動車損害賠償保障法施行令別表2の場合

 第1級  1100万円

 第2級  958万円

 第3級  829万円

 第4級  712万円

 第5級  599万円

 第6級  498万円

 第7級  409万円

 第8級  324万円

 第9級  245万円

 第10級 187万円

 第11級 135万円

 第12級 93万円

 第13級 57万円

 第14級 32万円

(2)①自動車損害賠償保障法施行令別表第1の該当者であって被扶養者がいるときは、第1級については1800万円とし、第2級については1333万円とする。

   ②自動車損害賠償保障法施行令別表第2第1級、第2級又は第3級の該当者であって被扶養者がいるときは、第1級については1300万円とし、第2級については1128万円とし、第3級については973万円とする。

(3)自動車損害賠償保障法施行令別表第1に該当する場合は、初期費用等として、第1級には500万円を、第2級には205万円を加算する。

 

死亡による損害は、葬儀費、逸失利益、死亡本人の慰謝料及び遺族の慰謝料とする。後遺障害による損害に対する保険金等の支払の後、被害者が死亡した場合の死亡による損害について、事故と死亡との間に因果関係が認められるときには、その差額を認める。

1 葬儀費

(1)葬儀費は、60万円とする。

(2)立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は、100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費とする。

2 逸失利益

(1)逸失利益は、次のそれぞれに掲げる年間収入額又は年相当額から本人の生活費を控除した額に死亡時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数を乗じて算出する。ただし、生涯を通じて全年齢平均給与額の年相当額を得られる蓋然性が認められない場合は、この限りでない。

① 有職者

   事故前1年間の収入額と死亡時の年齢に対応する年齢別平均給与額(別表Ⅳ)の年相当額のいずれか高い額を収入額とする。ただし、次に掲げる者については、それぞれに掲げる額を収入額とする。

 ア 35歳未満であって事故前1年間の収入額を立証することが可能な者

   事故前1年間の収入額、全年齢平均給与額の年相当額及び年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額

 イ事故前1年間の収入額を立証することが困難な者

 (ア)35歳未満の者

   全年齢平均給与額の年相当額又は年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額。

 (イ)35歳以上の者年齢別平均給与額の年相当額

 ウ 退職後1年を経過していない失業者(定年退職者等を除く)

   以上の基準を準用する。この場合において、「事故前1年間の収入額」とあるのは、「退職前1年間の収入額」と読み替えるものとする。

② 幼児・児童・生徒・学生・家事従業者

   全年齢併給給与額の年相当額とする。ただし、58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は、年齢別併給給与額の年相当額とする。

③ その他働く意思と能力を有する者

   年齢別平均給与額の年相当額とする。ただし、全年齢平均給与額の年相当額を上限とする。

(2)(1)にかかわらず、年金等の受給者の逸失利益は、次のそれぞれに掲げる年間収入額又は年相当額から本人の生活費を控除した額に死亡時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数を乗じて得られた額と、年金等から本人の生活費を控除した額に死亡時の年齢における平均余命年数のライプニッツ係数から死亡時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数を差し引いた係数を乗じて得られた額とを合算して得られた額とする。ただし、生涯を通じて全年齢平均給与額の年相当額を得られる蓋然性が認められない場合にはこの限りでない。年金等の受給者とは、各種年金及び恩給制度のうち原則として受給権者本人による拠出生のある年金等を現に受給していた者とし、無拠出性の福祉年金や遺族年金は含まない。

 ① 有職者

   事故前1年間の収入額と年金等の額を合算した額と、死亡時の年齢に対応する年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額とする。ただし、35歳未満の者については、これらの比較のほか、全年齢平均給与額の年相当額とも比較して、いずれか高い額とする。

 ② 幼児・児童・生徒・学生・家事従業者

   年金等の額と全年齢平均給与額の年相当額のいずれか高い額とする。ただし、58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は、年齢別平均給与額の年相当額と年金等の額のいずれか高い額とする。

 ③ その他働く意思と能力を有する者

   年金等の額と年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額とする。ただし、年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を上回る場合は、全年齢平均給与額の年相当額と年金等の額のいずれか高い額とする。

(3)生活費の立証が困難な場合、被扶養者がいるときは年間収入額又は年相当額から35%を被扶養者がいないときは年間収入額又は年相当額から50%を生活費として控除する。

3 死亡本人の慰謝料

  死亡本人の慰謝料は350万円とする。

4 遺族の慰謝料

  慰謝料の請求権者は、被害者の父母、配偶者及び子(養子、認知した子、胎児を含む)とし、その額は、請求権者1人の場合は550万円とし、2人の場合は650万円とし、3人以上の場合は750万円とする。なお、被害者に被扶養者がいる場合には200万円を加算する。

 

死亡に至るまでの傷害による損害は、積極損害、休業損害及び慰謝料とし、傷害による損害の基準を準用する。ただし事故当日及び事故翌日死亡の場合は、積極損害のみとする。

 

被害者に重大な過失がある場合には次に掲げる表のとおり、積算した損害額が保険金額に満たない場合には損害額から、保険金額以上になる場合には保険金額から減額を行う。ただし、傷害による損害額(後遺障害及び死亡に至る場合を除く)が20万円未満の場合はその額とし、減額により20万円未満となる場合は20万円とする。

表省略

被害者の過失が7割未満の場合は、後遺障害又は死亡に係るもの、傷害に係るものいずれも減額なしとなります。

被害者の過失が7割以上10割未満の場合、傷害に係るものは2割減額となります。後遺障害又は死亡に係る者の場合、7割以上8割未満の場合は2割減額、8割以上9割未満の場合は3割減額、9割以上10割未満の場合は5割減額となります。

 被害者が既往症等を有していたため、死因又は後遺障害発生原因が明らかでない場合等受傷と死亡との間及び受傷と後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合は、死亡による損害及び後遺障害による損害について、積算した損害額が保険金額に満たない場合には積算した損害額から、保険金額以上となる場合には保険金額から5割の減額を行う。

 

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自賠責保険制度の概要

2017-04-12

自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法で定められた自動車損害賠償責任保険または自動車損害賠償責任共済のことで、自動車の運行によって死傷した被害者がその人身損害の全部または一部の賠償を受けられるなど、被害救済が図られるように、原則すべての車両に加入が義務付けられている強制保険です。このように人身損害を対象としており、物損はその対象にはなりません。強制保険であるため自動車は自賠責に加入しなければならず、加入せずに運行の用に供した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の刑事処罰を受けます。また、免許停止の行政処分も受けます。

 自賠責は保険金額に上限があり、この上限内で支払基準が定められています。例えば、傷害のみの場合上限は120万円であり、休業損害は1日5700円であり、慰謝料は1日4200円となっています。

 また、自賠責保険は被害者救済のための制度なので、被害者に過失があっても、加害者に過失がある限り、被害者に有利な減額割合となっています。具体的には、被害者の過失割合が7割未満の場合には減額されません。また、傷害に係るものについては、被害者の過失割合が7割以上10割未満の場合には2割減額されます。後遺障害又は死亡に係るものは、7割以上8割未満の場合には2割減額、8割以上9割未満の場合には3割減額、9割以上10割未満の場合には5割減額となっています。ただ、10割被害者側に過失がある場合には支払われません。

 自賠責には、被害者の当座の治療費や生活費を賄うための仮渡金の制度があります。被害者の方で請求すると、遅滞なく支払われることになります。仮渡金の金額については、死亡の場合は290万円となります。

脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの、上腕または前腕の骨折で合併症を有するもの、大腿または下腿の骨折、内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの、14日以上病院に入院することを要する傷害で医師の治療を要する期間が30日以上のもの、これらの場合は40万円となります。

 脊柱の骨折、上腕または前腕の骨折、内臓の破裂、病院に入院することを要する傷害で医師の治療を要する期間が30日以上のもの、14日以上病院に入院することを要する傷害、これらの場合は20万円となります。

 11日以上医師の治療を要する傷害は5万円となります。

 自賠責保険の請求手続は、賠償を実施した加害者が自賠責に請求する加害者請求と、被害者自身が行う被害者請求があります。加害者が任意保険に加入している場合には、任意保険が一括払いをして、後で加害者請求することになります。加害者が任意保険に加入していない場合や、自分自身で後遺障害認定手続をしたい場合には被害者請求をすることになります。後遺障害等級認定も自賠責で行われますので、後遺障害等級認定を受けたい場合には、後遺障害診断書も提出する必要があります。

 自賠責の保険金の支払に係る決定等に対しては異議申立を行うことができます。異議申立てに回数制限はありませんが、時効がありますので注意して下さい。また、紛争処理機構に対して紛争処理の申請ができます。この手続は一度しか利用できず、最終的に納得できない場合には裁判しかありません。

 

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交通事故の損害(物損)

2017-04-11

交通事故の損害には主に、人身損害と物損があります。人身損害は、人の身体生命に係る損害です。物損は物の損害、交通事故だと主に自動車や自転車の損害ということになるかと思われます。

 被害者車両が修理可能な場合には、修理費相当額が損害として認められます。この修理が可能であるというのは、物理的に修理が可能であるというだけではなく、経済的にも修理が可能であることが必要です。修理費の認定は、修理屋の見積書・請求書から行います。これらの書類の内容が、被害者量の衝突部位と整合性があるか否か、修理する必要性があるか否か、金額が妥当か否かを検討する必要があります。修理費は相当なものでなければならず、過剰な修理費用について、相当性が争いになることも少なくありません。

 先ほど、経済的全損の話をしましたが、修理費用が車両の時価等を超えている場合には経済的全損となります。この場合、損害として認められるのは、修理費用ではなく、車両の時価等になります。この点、修理費用と比較するのは車両の時価額のみではなく、これに加えて車検費用や車両購入費用等を含めた金額になります。車両の時価を調べるのは、いわゆるレッドブックが参考になります。

 修理が不能である場合には、車両を買い換えることになりますが、この場合には事故時の車両の時価と事故後の車両の売却代金(スクラップとしての売却代金)との差額、つまりは車両の買い替え差額が損害となります。

 車両を修理しても、事故歴が残ることなどにより、売却価格が下がるという場合には、評価損の問題が生じます。新車で購入して間もない時期に追突されたとして、修理費用だけ払われても納得できないといったご相談がよくあります。評価損が認められるか否かは、修理の程度、車種、登録年度、走行距離等を考慮して、修理費用を基準に判断される傾向にあります。一般的には、修理費用の何割かになろうかと思われます。

 修理期間中等で代わりの車両を使用した場合、その代車費用が損害として認められる場合があります。代車費用が認められるためには、代車を使用する必要性があり現実に代車を使用した場合でなければ請求はできません。営業車両や自家用車でも日常的にしようしている場合には必要性が認められるといえます。代車の使用が認められる期間は、修理の場合には修理に必要は期間であり、買い換えの場合には買い換えに必要な期間となります。また、使用する代車は同程度、同グレードのものが認められます。

 主として営業車両の問題ではありますが、事故のために車両が使用できなくなった場合、その期間、使用できていれば得られたであろう利益に相当する損害を、休車損といいます。代用できる遊休車両がある場合などは認められません。休車損の算定は、1日当たりの営業車使用による収入に、相当な修理期間か買い換え期間を乗じて算定します。車両を稼働しないことによって免れたガソリン代等の経費は控除する必要性があります。

 上記のように、車両の時価のみではなく、買換えに必要な費用も損害となると説明しましたが、具体的には、自動車取得税、自動車重量税、自動車税、自賠責保険料、登録の際の費用、車庫証明費用、廃車費用等です。これら以外にも、車両保管料、レッカー代、時価査定料、通信費、交通事故証明書交付手数料等の事故と相当因果関係が認められるものであれば、損害として認められます。

 なお、よくあるご相談ですが、物損については原則として慰謝料は認められません。

 

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交通事故の損害(傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)

2017-04-10

交通事故による慰謝料としては、傷害慰謝料(入通院慰謝料)、後遺傷害慰謝料、死亡慰謝料があります。

 傷害慰謝料とは、病院に入院や通院したことに対して支払われる慰謝料のことです。治療のために要した入院・通院の期間に基づき、算定することになります。算定基準は、自賠責基準や任意保険基準、裁判基準等々があります。が、自賠責請求する際は自賠責基準が用いられ、任意保険会社が提示してくるときは任意保険基準で提示してきます。弁護士が介入した場合や、裁判に至った場合には裁判基準で計算することになります。基本的には裁判基準で計算した方が高額になるケースが多いですが、怪我の程度が軽微な場合には、どの基準でも同じような金額になる場合があります。

 裁判基準で計算する場合には、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行しているいわゆる赤い本記載の別表等を参考にします。1日いくらというよりは、入院期間や通院期間に着目して算定します。原則として、別表1を使用しますが、通院が長期にわたる場合で通院頻度が少ない場合等は実通院日数の3.5倍を通院期間の目安にすることがあります。また、自宅にいてもギプス固定期間等を入院期間とすることもあります。むち打ち症で他覚所見がない場合等は別表2を使用することになります。別表1よりも低額になりますので注意が必要です。また、通院が長期にわたり、通院頻度が少ない場合等には実通院日数の3倍程度を通院期間の目安にすることもあります。

 後遺傷害慰謝料とは、後遺障害が生じたことに対して支払われる慰謝料です。後遺障害慰謝料は基本的に、自賠責保険で認定された後遺障害等級ごとに算定されます。赤い本等では等級ごとの慰謝料額の目安が掲載されています。しかし、後遺障害の内容や程度によって増減修正される可能性がありますので、注意が必要です。赤い本では、後遺障害14級の場合は110万円、後遺障害13級の場合は180万円、後遺障害12級の場合は290万円、後遺障害11級の場合は420万円、後遺障害10級の場合は550万円、後遺障害9級の場合は690万円、後遺障害8級の場合は830万円、後遺障害7級の場合は1000万円、後遺障害6級の場合は1180万円、後遺障害5級の場合は1400万円、後遺障害4級の場合は1670万円、後遺障害3級の場合は1990万円、後遺障害2級の場合は2370万円、後遺障害1級の場合は2800万円、ということが記載されています。

 死亡慰謝料とは、被害者が死亡したことに対して支払われる慰謝料のことです。死亡慰謝料は、裁判例では、死亡した被害者が一家の支柱であったか否か、すなわち、主として被害者の収入によって生計を維持していたか否かによって異なる傾向があります。赤い本等では目安が記載されています。赤い本によると、一家の支柱の場合は2800万円、母親・配偶者の場合は2500万円、その他は2000万円~2500万円とされています。これについても個別の事情によって増減する場合があります。

 被害者が死亡した場合、被害者本人の慰謝料とは別途に近親者の慰謝料が存在します。しかし、通常は定型的に算定される上記慰謝料の金額において近親者の慰謝料も含まれていると考えられています。

 上記の目安の他に、加害者側に不誠実な対応がある場合など、特段の事情がある場合には慰謝料が増額される可能性があります。どの程度増額するかは、個々の事案ごとに具体的に判断されることになります。

 

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交通事故の損害(死亡逸失利益)

2017-04-10

死亡逸失利益は、基本的には後遺障害逸失利益と類似し、つまりは労働能力が100%失われた場合と同じということになります。主な違いは生活費控除を行う点です。以下では、死亡逸失利益特有の点について解説いたします。

 死亡逸失利益の算定方法は、

基礎収入額×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数

になります。

基礎収入額については、後遺障害逸失利益の場合と同じく、給与所得の場合、事業所得の場合、会社役員の場合、家事従業者の場合、無職の場合等の問題があります。

ライプニッツ係数についても、基本的には67歳までが就労可能年齢として、18歳未満の場合は67歳までのライプニッツ係数から18歳までのライプニッツ係数を控除する必要があります。

被害者が年金を受給していた場合ですが、遺族厚生年金については、家族の生活保障のためではなく、遺族本人のための一身専属性が強いため逸失利益は認められないとされています。しかし、その他の老齢基礎年金、障害年金等については遺族の生活保障的意味も加味して逸失利益性が認められています。

会社役員の場合、後遺障害の場合と違って、死亡してしまうと利益配当部分も失ってしまうことから、これを基礎収入に入れるかが問題となります。しかし、判例は、後遺障害の場合と同じく、基礎収入としては認めない傾向です。つまり、死亡の場合も労務提供の対価部分のみ基礎収入として認められます。

 

 そして、生活費控除ですが、生活費控除率とは被害者の死亡により、被害者は将来の収入から支払われるはずであった生活費の支払を免れるため、将来の生活費相当分を控除する一定の割合をいいます。生活費控除は、被害者の家族関係、性別、年齢などに応じて逸失利益全体に対して一定の割合を控除する方式がとられています。控除の割合は、公益財団法人日弁年交通事故相談センターが発行している青本の基準を紹介いたします。

 青本によると、一家の支柱の場合は30~40%、女性の場合30~40%、男性単身者の場合は50%とされています。この生活費控除率を上記の方程式に算入して、死亡逸失利益を算定していくことになります。

 

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交通事故の損害(後遺障害逸失利益)

2017-04-09

逸失利益とは、当該交通事故がなければ被害者が将来得られるであろう経済的利益を失ったことによる損害です。逸失利益には、後遺障害による逸失利益と死亡による逸失利益の二つがあります。

 後遺障害逸失利益の算定方法は、

基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間×ライプニッツ係数となります。逸失利益は将来にわたっての事情になりますので、逸失利益認定にあたっては、減収の有無だけでなく、後遺障害の内容、労働能力低下の程度、職務内容、配置転換、退職の可能性、勤務先の規模、雇用環境、被害者の努力、日常生活上の支障等々を総合して認定します。なお、18歳未満の者については、通常、就労の始期が18歳とされていることから、上記計算式のライプニッツ係数については、67歳までのライプニッツ係数から18歳に達するまでのライプニッツ係数を差し引くことになります。

 労働能力喪失率とは、労働能力の低下の程度のことをいいます。労働能力低下の程度は、自動車損害賠償保障法施行令別表を参考にします。裁判例はおおむねこの労働能力喪失表によって判断しているものがほとんどですが、被害者の後遺障害の内容、職務内容、事故前後の稼働状況等々を考慮してこの表と違う喪失割合が認定されることもあります。減収が生じていない場合についても、本人の努力等によって減収を免れているとして逸失利益を認めている裁判例もあります。この表によると、後遺障害14級の場合は5%、後遺障害13級の場合は9%、後遺障害12級は14%、後遺障害11級は20%、後遺障害10級は27%、後遺障害9級は35%、後遺障害8級は45%、後遺障害7級は56%、後遺障害6級は67%、後遺障害5級は79%、後遺障害4級は92%、後遺障害3級~1級は100%の労働能力喪失率となっています。

 労働能力喪失期間の始期は症状固定日であり、未就労者の場合は原則18歳からとされています。終期は原則として67歳であり、例外として症状固定時から67歳までの年齢が年数が平均余命の2分の1よりも短くなる高齢者の労働能力喪失期間は、平均余命の2分の1とされます。症状によっては期間を制限されることがあり、例えば、むちうちの場合には5年や10年に期間を制限されることが多いので注意が必要です。

 逸失利益の請求は将来の損害を一時金で受け取ることになりますので、中間利息の控除が必要になります。そして、原則として中間利息控除率年5%のライプニッツ係数を使うことになります。

 次に基礎収入の算定方法になりますが、給与所得者の場合、事故前の収入を基礎として算定します。収入には本給の他に歩合や各種手当を含みます。原則として事故前の収入を基礎としますが、30歳未満の若年で、現実収入が賃金センサスの平均賃金よりも低い場合には賃金センサスの平均賃金を基礎収入とすること等もあります。また、税込金額を是基礎とします。

 事業所得者の場合、原則として申告所得を基礎とすることになります。事業所得に本人以外の稼働による利益が入っている場合には、基礎収入となるのは、本人自身の稼働による利益分(本人寄与部分)になります。現実収入が平均賃金以下の場合には、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の賃金センサスによることになります。

 会社役員についても、基礎となるのは、本人の労務提供の対価となる報酬部分に関してのみであり、利益配当の実質を持つ部分は基礎収入としては認められません。

専業主婦の場合は、原則として全年齢平均賃金を基礎とします。有職の主婦の場合、実収入が全年齢平均を上回っている場合には実収入を基礎としますが、下回っている場合には全年齢平均賃金を基礎とします。

幼児、学生等の無職者は原則として全年齢平均賃金を基礎とします。ただし、大学生等は学歴別平均賃金で使用して修正する可能性はあります。

それ以外の無職者は就労の蓋然性がある場合には、全年齢平均賃金を基礎とします。

外国人の場合、適法な在留資格を所持している場合には、日本人と同様に計算します。しかし、不法滞在者の場合には、日本における収入額と、本国における収入額を基礎として計算することになります。

 

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交通事故の損害(休業損害)

2017-04-08

消極損害とは、事故により失った得べかりし利益、つまり、事故がなければ将来被害者が得られたであろうと考えられる利益を事故によって失ったことによる損害をいいます。事故によって被害者の財産がマイナスになった損害を積極損害といい、事故によって被害者の財産がプラスにならなかった損害を消極損害といいます。消極損害には休業損害と逸失利益(後遺障害逸失利益、死亡逸失利益)があります。ここでは休業損害の説明をします。

 休業損害とは、被害者が受傷の治療または療養のために休業または不十分な就業を余儀なくされたことにより、傷害の治癒または症状固定までの間に生じた収入源、つまり得べかりし収入を得ることができなかったことによる損害をいいます。事故前の収入を基礎として、現実の収入源を補償するものになります。なお、自賠責保険の基準では1日5700円となっています。

 休業損害が認められるためには、原則として被害者が事故時において現に就業による収入を得ていたことが必要です。また、現に休業して収入が減少していることが必要です。休業損害の算定方法は、基礎収入×休業期間になります。具体的には収入日額×休業日数になります。休業損害証明書などで、休業日数が明確な場合には基礎収入に休業日数を乗じた金額になりますが、休業期間が長期にわたり休業の必要性が問題になる場合や主婦等の場合で休業日数が必ずしも明確じゃない場合には、休業日数の認定が問題となります。この場合には、休業することが相当な期間を休業期間と認定したり、症状の推移をみて一定割合を減じた日数を認定したり、実通院日数や治療期間期間を休業期間として認定することがあります。休業損害を立証する書類としては、休業損害証明書、源泉徴収票、給与明細、確定申告書控え等があります。

 休業日数については、上記のような問題がありますが、それでは基礎収入はどのように認定するのでしょうか。

 給与所得者の場合には、基本的には事故前3か月の平均給与を基礎とします。給与額には基本給の他に各種手当を含みます。有給休暇を利用した場合についても休業損害として認められます。休業によって賞与の減額・不支給があった場合や休業により昇給・昇格が遅延した場合、降格・配置転換により昇給額が減少した場合についても損害として認められます。また、受傷、その治療を原因として退職して無職状態になっても、現実に稼働困難な期間が休業期間とされます。

 所得税・住民税等の税金は控除せずに算定するのが一般的です。

 事業所得者の基礎収入は、原則として事故前年の確定申告所得によって認定します。そして、基礎収入は、売上(収入)から経費を差し引いた所得になります。ただし、経費の内、休業中も事業の維持・継続のために支出することがやむを得ない固定費は、相当性がある限り、休業損害に含まれます。固定費としては、家賃、電気代等の公共料金、租税公課、保険料、従業員給与、減価償却費等があります。つまり、売上から差し引くのは流動経費ということになります。

 事業所得に、事業者本人以外の第三者働きによる利益などが含まれる場合については、休業補償の対象となるのは、本人自身の稼働による利益分、つまり本人寄与分ということになります。家賃収入、利子等の不労所得的なものは含まれないということです。本人寄与率は個々のケースに応じて算定します(業種、職務内容、本人以外の関与の程度、代替労働力等々を考慮します)。

 会社役員の役員報酬は給与と異なり、休業したからといって直ちに全額を減額されるというものではありません。役員報酬には労務提供の対価部分としての報酬と利益配当の実質を有する報酬があるといえ、利益配当の部分についてはその地位にいる限り休業損害の問題は生じないと考えられています。そうすると、労務提供の対価部分の報酬の認定が問題となります。これについても様々な要素を検討して判断します。具体的には、会社の規模や当該役員の地位や職務内容、役員報酬の額、他の役員・従業員の職務内容や報酬・給与の額、事故後の報酬額の推移等を考慮します。

 家事従業者の場合には、原則として、賃金センサスの女子平均賃金により損害額を算定します。家事従業者とは、主婦に限らず、現に主として家事労働に従事する者をいい、性別、年齢を問いません。男子の家事従業者の場合にも女子労働者の賃金センサスにより算定します。有職主婦の場合で、現実収入が平均賃金を超えるときは現実収入を基礎として、現実収入が平均賃金以下のときは平均賃金を基礎として算定します。

 失業者の場合には原則として休業損害は認められません。しかし、就職が内定している場合等、治療期間内に就労の蓋然性がある場合には休業損害が認められます。また、学生についても原則として休業損害は認められませんが、アルバイト等をしている場合には認められることがあります。外国人の場合にも在留資格の有無にかかわらず、日本人と同じ基準で休業損害は認められます。

 

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