Archive for the ‘刑事事件コラム’ Category

中国人の刑事弁護(偽証の罪)

2017-05-19

偽証の罪で逮捕されてしまった場合には、どのように対応したら良いでしょうか。偽証の罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(偽証)

第169条  法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する。

(自白による刑の減免)

第170条  前条の罪を犯した者が、その証言をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

(虚偽鑑定等)

第171条  法律により宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは、前二条の例による。

 

169条は偽証罪に関する規定です。保護法益は国の審判作用の適正な運用です。主体は、法律により宣誓した証人です。法律によりとは、法律の根拠に基づいてという意味です。直接法律に規定されている場合のほか、命令その他の下位立法に規定のある場合を含みます。また、法律による宣誓は民事・刑事の訴訟事件においておこなわれるほか、非訟事件においてもなされる。宣誓は、有効におこなわれることを要します。ただし、軽微な手続上の瑕疵があっても直ちに無効となるわけではありません。宣誓無能力者に誤って宣誓させた場合にはその宣誓は法律無効であるから、本罪は成立しないと解されています。証言拒絶権の或る者が宣誓のうえ、拒絶権を行使しないで虚偽の陳述をした場合は本罪が成立します。共犯者または共同被告人が被告人としてでなく、証人として宣誓のうえ、虚偽の陳述をした場合も本罪が成立します。

行為は虚偽の陳述をすることです。虚偽とは、証人の記憶に反することをいいます。事実をまったく黙秘した場合には、偽証罪は成立しません。故意の内容は、宣誓したことを認識して記憶と違う虚偽の陳述をすることです。

尋問手続終了後、虚偽の陳述を訂正をしても本罪は成立します。ただし、170条により、刑が任意的に減免されえます。

 

以上偽証罪について説明してきましたが、偽証罪で逮捕されてしまった場合にはどのような弁護活動が有効でしょうか。この点、偽証罪の保護法益が国の審判作用の適正な運用であること、170条において刑の任意的減免が規定されていることから、認めている場合には自白をすることも重要な選択肢になります。自白をしたような場合では、事案にもよりますが、不起訴になる可能性があります。また、起訴されてしまった場合でも、自白をしたことは非常に有利な事情になります。処分関係のみならず、逮捕勾留されている場合でも、自白すれば、釈放される可能性もあり、起訴後は保釈も認められやすくなる等、身柄解放の時期も早まると考えられます。ただ、その証言をした裁判が確定するまでに自白しなければ170条は適用されませんので時期が非常に重要です。よって、偽証罪で逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く弁護士に依頼して、自白をするか否かを決める必要がある等専門的な見地が必要です。

なお、否認している場合には、取調べ対応が特に重要になり、黙秘権を行使する等自白を取られないことが重要ですので、この場合もできるだけ早く弁護士に依頼することをお勧めします。

 

中国人の刑事事件、偽証罪、逮捕、示談、不起訴、釈放、保釈、執行猶予に関するご相談は、中国語の話せる弁護士永田洋子にご相談ください。

電話番号0800-700-2323(フリーコール)

中国人の刑事弁護(虚偽告訴の罪)

2017-05-18

虚偽告訴の罪で逮捕されてしまった場合には、どのように対応したら良いでしょうか。虚偽告訴の罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(虚偽告訴等)

第172条  人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する。

(自白による刑の減免)

第173条  前条の罪を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

 

172条は虚偽告訴罪に関する規定です。本罪の保護法益は、一時的には国家の審判作用の適正な運用、二次的に個人の私生活の平穏と解されています。行為は、虚偽の申告をすることです。虚偽とは、客観的真実に反することをいいます。主観的に真実に反しても保護法益の観点から処罰に値しないからである。したがって、偽証罪による虚偽とは異なることになります。申告内容としての虚偽の事実は、刑事又は懲戒処分の原因となりうるものでなければなりません。また、当該官庁の誤った職権発動を促すにたりる程度の具体的なものでなければなりません。申告方法は口頭によるか書面によるかは問いません。申告は相当官署・懲戒権者に対して行われる必要があります。申告は自発的なものでなければなりません。既遂時期は虚偽の申告が相当官署に到達した時です。文書が到達し、閲覧しうる状態になればたり、被告訴者が申告の内容を知ることや、検察官等が捜査に着手・起訴等をしたことは必要ではありません。故意には、申告すべき事実が虚偽であることの認識が必要です。被告訴者の同意があってもその同委は無効です。

173条は、自白による刑の減免の規定です。

 

以上、虚偽告訴罪についての説明をしてきましたが、虚偽告訴罪で逮捕されてしまった場合にはどのような弁護活動が有効でしょうか。この点、虚偽告訴罪の保護法益が一時的には国家の審判作用の適正な運用であること、173条では自白によって刑の減免のが規定されていることから、認めてる場合には自白することも重要な選択肢になります。また、二次的な保護法益は個人の私生活の平穏であることから、被害者と示談することも重要といえます。自白をし、示談も成立しているような場合では、事案にもよりますが、不起訴になる可能性があります。また、起訴されてしまった場合でも、自白や示談成立は非常に有利な事情になります。処分関係のみならず、逮捕勾留されている場合でも、自白や示談が成立すれば、釈放される可能性もあり、起訴後は保釈も認められやすくなる等、身柄解放の時期も早まると考えられます。よって、虚偽告訴罪で逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く弁護士に依頼して、自白をするか否かを決めて、認めるならば示談交渉を進めること決めることをお勧めします。自白するか否かや、被害者が未成年の場合等には、法定代理人と示談する必要があり、示談の相手方を考えるにあたっても専門的な見地が必要です。

なお、否認している場合には、取調べ対応が特に重要になり、黙秘権を行使する等自白を取られないことが重要ですので、この場合もできるだけ早く弁護士に依頼することをお勧めします。

 

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中国人の刑事弁護(収賄の罪、賄賂、贈賄)

2017-05-17

収賄、贈賄の罪で逮捕されてしまった場合には、どのように対応したら良いでしょうか。収賄、贈賄の罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(収賄、受託収賄及び事前収賄)

第197条  公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。

2  公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。

(第三者供賄)

第197条の2  公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。

(加重収賄及び事後収賄)

第197条の3  公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処する。

2  公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。

3  公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。

(あっせん収賄)

第197条の4  公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。

(没収及び追徴)

第197条の5  犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

(贈賄)

第198条  第197条から第197条の4までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。

 

197条1項前段は単純収賄罪の規定です。主体は公務員です。行為は賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をすることです。収受とは、賄賂を取得することをいいます。収受の時期は職務の執行の前後を問いません。要求とは、賄賂の供与を要求することをいい、相手方がこれに応じなくても要求をおこなった時点で既遂となります。約束とは贈賄者と収賄者との間で将来賄賂を授受すべきことについて合意することをいいます。約束が行われれば既遂となり要求を撤回したり解除しても犯罪は成立します。賄賂を要求・約束して収受した場合、包括して単純収賄罪一罪が成立します。

197条1項後段は、受託収賄罪の規定です。本罪は請託を受けたことによって単純収賄罪よりも重く罰するもので、同罪の加重類型です。請託とは、公務員に対し、職務に関し一定の職務行為を依頼することをいいます。正当な職務の依頼でもよく、請託の対象となる職務行為はある程度具体的なものであることを要します。受けるとは、依頼(請託)を承諾することです。公務員が将来担当するかもしれない職務であっても賄賂罪の職務に該当しえます。

197条2項は事前収賄罪の規定です。主体は公務員になろうとするものです。行為はその担当すべき職務に関し、請託を受けて賄賂を収受・要求・約束することです。その担当すべき職務とは、公務員に就任した場合に担当することが予想される職務をいい、職務は相当程度具体的であることを要します。「関し」とは、担当すべき職務行為またはそれと密接に関係がある行為と賄賂との間に対価関係が認められるべきことを意味します。本罪は行為者が公務員になってはじめて処罰されます。

197条の2は第三者供賄罪の規定です。第三者を介して間接的に職務に関連して利益を得る脱法的行為を取り締まる規定です。主体は公務員です。行為は、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をすることです。第三者とは、当該公務員以外の者をいいます。本罪を教唆・ほう助した者を含みます。第三者は当該利益が賄賂であることを認識していなくてよいです。賄賂は、当該公務員の職務行為との間に対価関係があることが必要です。供与とは、利益を受け取らせることいいます。

197条の3第1項、2項は加重収賄罪の規定です。本条は収賄行為とともに、それに関連して職務違反の行為がおこなわれたことを理由にこれを重く処罰するものです。主体は公務員及び公務員になろうとするも者です。1項の行為は、単純収賄罪・受託収賄罪・事前収賄罪・第三者供賄罪を犯し、よって不正な行為をし、または相当な行為をしないことになります。2項の行為は、職務上不正な行為をし、または相当な行為をしなかったことに関し、賄賂を収受・要求・約束し、または第三者にこれを供与させ、その供与を要求・約束することです。

197条の3第3項は、事後収賄罪の規定です。主体は過去に公務員であった者です。行為は、在職中請託を受けて職務違反行為をし、退職後にこれに関して収受・要求・約束をすることになります。

197条の4はあっせん収賄罪の規定になります。主体は公務員です。単なる私人として行為するときは主体とならないが、公務員の地位ないし立場で行為する限り積極的にその地位を利用しなくても本罪の主体となりえます。行為はあっせんすることです。あっせんとは、一定の事項について両当事者間の間に入って仲介することをいいます。他の公務員の職務について違法な行為の働きかけがあった場合だけでなく、他の公務員の裁量判断に不当な影響を及ぼした場合も本罪が成立します。賄賂は、職務に対する対価ではなく、あっせんすることの対価です。

197条の5は、没収及び追徴の規定です。本条の意義は、収賄者に不法の利益を保有させないことにあります。没収・追徴に関する19条、19条の2の特則であり、必要的である点で異なります。

198条は贈賄罪に関する規定です。主体は非公務員であることを原則としますが、公務員であっても単なる私人として行う場合には本罪の主体となります。行為は、賄賂の供与・申込み・約束をすることです。供与とは、賄賂を相手方に収受させる行為をいいます。申し込みとは、収受を促すことをいいます。相手方に賄賂たることを認識しうる事情のもとに賄賂の収受を促せばたり、実際に相手方がその意思表示を、または、その利益が賄賂であることを認識する必要はありません。約束とは、将来において賄賂を供与することについて公務員と合意に達することをいいます。

 

以上、収賄罪、贈賄罪等について説明をしてきましたが、収賄罪、贈賄罪で逮捕されてしまった場合には、どのような弁護活動が有効でしょうか。この点、これらの罪の保護法益は職務の公正とこれに対する社会一般の信頼であると解されています。つまり個人的法益ではなく社会法益であるといえます。そうすると、示談をするというのは実効性がないといえます。そこで、不正な利益を保有している場合にはそれを吐き出すという意味合い、また、反省を示す意味で、贖罪寄付という手段が考えられます。贖罪寄付の効果については過大な期待はできませんが、贖罪寄付をしたことは一定の有利な事情にはなると考えられます。

 

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中国人の刑事弁護(堕胎の罪)

2017-05-16

堕胎の罪で逮捕されてしまった場合、どのように対応したら良いでしょうか。堕胎の罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(堕胎)

第212条  妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、1年以下の懲役に処する。

(同意堕胎及び同致死傷)

第213条  女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させた者は、2年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させた者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

(業務上堕胎及び同致死傷)

第214条  医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、3月以上5年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、6月以上7年以下の懲役に処する。

(不同意堕胎)

第215条  女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、6月以上7年以下の懲役に処する。

2  前項の罪の未遂は、罰する。

(不同意堕胎致死傷)

第216条  前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 

堕胎の罪の、第一次的な保護法益は胎児の生命であるといえます。また二次的には母体の安全であるといえますたとえば、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷の罪で逮捕されてしまった場合には、胎児の母親または遺族と示談をすることが重要であるといえます。この場合、慰謝料等を支払い示談をすることになります。

212条の堕胎罪、213条の同意堕胎罪、214条の業務上堕胎罪の場合、母親の同意があることが通常ですので、想定以上の致死傷の結果が生じた場合を除いて、この母親と示談することは筋違いと考えられます。堕胎の罪の一時的な保護法益は胎児の生命でありますが、胎児は死亡していますのでその母親と示談することも筋違いな感じがします。堕胎罪は、胎児の生命を守ると同時に、無秩序な堕胎を許さないという社会秩序を守るという社会的法益を保護するという側面もあると考えられます。そこで、反省を示すという意味で、贖罪寄付等を検討することが考えられます。

堕胎の罪といっても、様々な態様があるといえますので、示談をするべきか否か等も検討するために、できるだけ早く弁護士に相談し依頼するべきでしょう。

 

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中国人の刑事弁護(あへん煙に関する罪)

2017-05-15

あへん煙に関する罪で逮捕されてしまった場合には、どのように対応したら良いでしょうか。あへん煙に関する罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(あへん煙輸入等)

第136条  あへん煙を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、6月以上7年以下の懲役に処する。

(あへん煙吸食器具輸入等)

第137条  あへん煙を吸食する器具を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

(税関職員によるあへん煙輸入等)

第138条  税関職員が、あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を輸入し、又はこれらの輸入を許したときは、1年以上10年以下の懲役に処する。

 

(あへん煙吸食及び場所提供)

第139条  あへん煙を吸食した者は、3年以下の懲役に処する。

2  あへん煙の吸食のため建物又は室を提供して利益を図った者は、6月以上7年以下の懲役に処する。

(あへん煙等所持)

第140条  あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を所持した者は、1年以下の懲役に処する。

(未遂罪)

第141条  この章の罪の未遂は、罰する。

 

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中国人の刑事弁護(遺棄の罪)

2017-05-15

遺棄の罪で逮捕されてしまった場合、どのように対応したら良いでしょうか。遺棄の罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(遺棄)

第217条  老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、1年以下の懲役に処する。

(保護責任者遺棄等)

第218条  老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。

(遺棄等致死傷)

第219条  前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 

217条は遺棄罪に関する規定です。遺棄罪の保護法益は人の生命・身体です。老年幼年とは、老人、幼児の意味です。身体障碍とは、身体器官の不完全な者を指します。疾病者には、身体上の病気のほか精神病にかかっている者、その他広く身体上、精神上の疾患を持つ者が含まれます。扶助を必要とするものとは、単に経済的に困窮しているだけで、心身ともに健康な成人は本罪の客体にはなりません。扶助を必要とするものとは、他人の保護によらなければ、みずから日常生活を営む動作をすることが不可能もしくは著しく困難なため、自己の生命に生ずる危険を回避でいない者をいいます。

行為は遺棄することです。遺棄とは、要扶助者を従来の場所から生命に危険な他の場所に移転させることをいいます。移転させられた場所が生命に危険な場所であることが必要になります。例えば、判例では、結核を患い寺から解雇された被害者が無断で寺に戻ったため、これを道路に追い出した事案で遺棄罪の成立を認めています。

218条は、保護責任者遺棄罪の規定です。行為者に保護する責任があるため、単純遺棄罪よりも刑が重くなっています。保護責任者については、要扶助者の生存に必要な保護をしない不作為、不保護も処罰されます。

保護義務は、法令の規定に基づくもの、契約に基づくもの、事務管理に基づくもの、条理に基づくもの等があります。法令の規定は公法でも私法でもよいです。たとえば、警察官職務執行法3条による保護義務や、民放820条の親権者の子に対する監護義務などがあります。契約は明示のものであると黙示のものであるとを問いません。雇主と同居人との間で、雇人が病気になった場合には雇主がこれを保護するという黙示の契約があるときは、雇主には保護義務が認められます。契約に基づく法令上の手続きをすませたかどうかにかかわらず保護義務の根拠となります。契約は必ずしも遺棄者と被遺棄者との間で締結されたものであることを要しません。

行為は、遺棄することまたは、生存に必要な保護をしないことです。

219条は、単純遺棄罪、保護責任者遺棄罪の結果的加重犯です。

 

以上、遺棄罪、保護責任者遺棄罪の説明をしてきましたが、遺棄罪、保護責任者遺棄罪で逮捕されてしまった場合、どのような弁護活動が有効でしょうか。上記に書いた通り、単純遺棄罪、保護責任者遺棄罪の双方とも、保護法益は生命・身体の安全ということになります。そこで、被害者と示談をすることが非常に有効な弁護活動になると考えられます。慰謝料等を支払い、示談をして、被害者に許してもらうことができた場合には、事案にもよりますが、不起訴になる可能性があります。また、起訴されてしまった場合でも、示談成立は非常に有利な証拠になります。処分関係のみならず、逮捕勾留されている場合でも、示談が成立すれば、釈放される可能性もあり、起訴後は保釈も認められやすくなる等、身柄解放の時期も早まると考えられます。よって、逮捕監禁罪で逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く弁護士に依頼して、示談交渉を進めることをお勧めします。被害者が未成年の場合等には、法定代理人と示談する必要があり、示談の相手方を考えるにあたっても専門的な見地が必要です。

なお、否認している場合には、取調べ対応が特に重要になり、黙秘権を行使する等自白を取られないことが重要ですので、この場合もできるだけ早く弁護士に依頼することをお勧めします。

 

中国人の刑事事件、遺棄罪、保護責任者遺棄罪、逮捕、示談、不起訴、釈放、保釈、執行猶予に関するご相談は、中国語の話せる弁護士永田洋子にご相談ください。

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中国人の刑事弁護(過失運転致死傷、危険運転致死傷等)

2017-05-14

交通事故の加害者側、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪等で逮捕されてしまった場合、どのように対応したら良いでしょうか。過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪について、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律では、以下のように規定されています。

 

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

(定義)

第一条  この法律において「自動車」とは、道路交通法 (昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第九号 に規定する自動車及び同項第十号 に規定する原動機付自転車をいう。

2  この法律において「無免許運転」とは、法令の規定による運転の免許を受けている者又は道路交通法第百七条の二 の規定により国際運転免許証若しくは外国運転免許証で運転することができるとされている者でなければ運転することができないこととされている自動車を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は当該国際運転免許証若しくは外国運転免許証を所持しないで(同法第八十八条第一項第二号 から第四号 までのいずれかに該当する場合又は本邦に上陸(住民基本台帳法 (昭和四十二年法律第八十一号)に基づき住民基本台帳に記録されている者が出入国管理及び難民認定法 (昭和二十六年政令第三百十九号)第六十条第一項 の規定による出国の確認、同法第二十六条第一項 の規定による再入国の許可(同法第二十六条の二第一項 (日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法 (平成三年法律第七十一号)第二十三条第二項 において準用する場合を含む。)の規定により出入国管理及び難民認定法第二十六条第一項 の規定による再入国の許可を受けたものとみなされる場合を含む。)又は出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の十二第一項 の規定による難民旅行証明書の交付を受けて出国し、当該出国の日から三月に満たない期間内に再び本邦に上陸した場合における当該上陸を除く。)をした日から起算して滞在期間が一年を超えている場合を含む。)、道路(道路交通法第二条第一項第一号 に規定する道路をいう。)において、運転することをいう。

(危険運転致死傷)

第二条  次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

一  アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

二  その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

三  その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

四  人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

五  赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

六  通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

第三条  アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。

2  自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱)

第四条  アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、十二年以下の懲役に処する。

(過失運転致死傷)

第五条  自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

(無免許運転による加重)

第六条  第二条(第三号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、六月以上の有期懲役に処する。

2  第三条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は六月以上の有期懲役に処する。

3  第四条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十五年以下の懲役に処する。

4  前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。

 

自動車の運転によって、過失により人を死傷させてしまった場合、かつては刑法に規定されていた自動車運転過失致死傷罪で処罰がされていました。これらが、刑法から削除され、独立して上記法律に規定されるようになり、また、内容も充実するようになりました。内容としては、基本的には刑法の時と変わらない、過失運転致死傷罪があり、詳細な要件が規定されている危険運転致死傷罪や、アルコール等影響発覚免脱行為をした場合には加重して処罰される規定や、無免許運転による加重規定が設けられました。

これらの、規定の保護法益は人の身体生命であると考えられます。そのため、これらの罪で逮捕されてしまった場合には、被害者と示談をすることが重要になります。通常であれば、任意保険に加入していると思われるので、損害賠償関係は任意保険会社の担当者に進めてもらうのがよろしいと思います。ただし、謝罪等についてはやはり、本人でしかできないことなので、本人からの謝罪の申し出や、謝罪文の送付等をする必要があると思われます。示談が成立し、被害者が許してくれるという場合には、事故の程度によりますが、不起訴処分になる可能性があります。法5条但書きでは「ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されており、示談や謝罪等の有利な情状を積み重ねることは重要です。起訴されてしまった場合でも、示談が成立していることは有利な情状になります。できるだけスムーズに示談ができればよいので、謝罪等はできるだけ早く申し出るのがよろしいと思います。そのため、弁護士に早く依頼することをお勧めします。弁護士が保険会社と連絡を取りながら、示談の進捗を確認しながら謝罪活動をしていくことになります。任意保険に加入していない場合には、賠償をすべて自己負担しなければならないので大変です。また、保険会社は示談交渉をしてくれないので、被害者から請求された額が正しい額か否かわからないこともあります。任意保険に加入していない場合にも、弁護士に依頼して適正な損害額を計算してもらい示談交渉をしてもらうことをお勧めします。被害者に支払った額のうち一部は自賠責保険から回収できる可能性があります。

通常の過失運転致死傷であれば、任意保険に加入しており、しっかり反省していれば、いきなり実刑になることは少ないです。しかし、危険運転致死傷や飲酒運転、無免許運転等が加わった場合にはいきなり実刑ということも十分にあります。そのような場合には、賠償のみならず、反省の態度を示すために反省文を作成したり、交通安全DVD等を見て感想文を書く等のしっかりした対応をする必要性があります。この点も担当の弁護士としっかり相談することをお勧めします。

過失運転致死傷罪等で、否認している場合、特に過失を否認しているような場合には、主張が通った場合には不起訴や無罪となります。どのような場合に過失の否認の主張が通るかというと、予見可能性結果回避可能性がない場合、つまり避けようと思っても避けられなかった場合があります。具体的には、歩行者がいきなり赤信号無視して飛び出してきた場合、対抗車線を走る車がいきなり事故の車線に突っ込んできた場合、等々、過失否認の主張が通る場合がります。このような場合には警察とは別に弁護人である弁護士が現場に行って実況見分をすることがあります。とくに、見落とされている防犯カメラ等があったりしますので、重要です。また、取調べ対応も非常に重要です。特に過失犯の場合、法律的にも難しい場合が多いです。取調官はプロ中のプロです。知らない間に過失を認めた調書がとられていてもおかしくはありません。できるだけ早く弁護士に相談、依頼することをお勧めします。

 

中国人の刑事事件、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪、無免許運転、飲酒運転、酒気帯び運転、逮捕、示談、不起訴、釈放、保釈、執行猶予に関するご相談は、中国語の話せる弁護士永田洋子にご相談ください。

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中国人の刑事弁護(逮捕及び監禁)

2017-05-13

逮捕監禁罪で逮捕されてしまった場合、どのように対応したら良いでしょうか。逮捕監禁罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(逮捕及び監禁)

第220条  不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

(逮捕等致死傷)

第221条  前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 

220条は逮捕監禁罪に関する規定です。保護法益は、個人的法益としての人の身体・行動の自由です。客体は、身体活動の自由を有する自然人です。本罪は身体活動の自由を保護法益とすることから、意思に基づく身体の活動能力をまったく有しない嬰児や意識喪失状態の者は、客体には含まれません。被害者は現実的行動能力を有することは必要ではなく、潜在的可能的自由で足ります。また、被害者自身は監禁されている事実を認識する必要はありません。

220条前段は逮捕罪に関する規定です。逮捕とは、人の身体を直接的に拘束して、その身体活動の自由を奪うことをいいます。縄で縛るような有形的手段でも、詐欺脅迫などの無形的手段であってもよいです。

220条後段は監禁罪に関する規定です。監禁とは、人の身体を間接的(場所的)に拘束してその身体活動の自由を奪うこと、すなわち人が一定の区画された場所から脱出することを不能または著しく困難にすることをいいます。有形的・無形的いずれでもよく、また、手段方法は問いません。脱出の方法があっても、社会通念上人が脱出するのに困難を感じる方法で身体活動の自由を奪うときは監禁にあたります。たとえば、自動車を疾走させて脱出を困難にすれば、絶対に脱出が困難でなくとも監禁になります。監禁する場所は囲ってある場所でなくてもよく、原動機付自転車から降りられないようにするのも監禁に該当します。

逮捕と監禁は、同一法条に規定された同性質の犯罪であることから、人を逮捕し引き続いて監禁した場合には逮捕・監禁一罪が成立することになります。

 

以上、逮捕監禁罪の解説をしてきましたが、逮捕監禁罪で逮捕されてしまった場合、どのような弁護活動が有効でしょうか。上記に書いた通り、逮捕監禁罪の双方とも、保護法益は個人の身体・行動の自由ということになります。そこで、被害者と示談をすることが非常に有効な弁護活動になると考えられます。慰謝料等を支払い、示談をして、被害者に許してもらうことができた場合には、事案にもよりますが、不起訴になる可能性があります。また、起訴されてしまった場合でも、示談成立は非常に有利な証拠になります。処分関係のみならず、逮捕勾留されている場合でも、示談が成立すれば、釈放される可能性もあり、起訴後は保釈も認められやすくなる等、身柄解放の時期も早まると考えられます。よって、逮捕監禁罪で逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く弁護士に依頼して、示談交渉を進めることをお勧めします。

なお、否認している場合には、取調べ対応が特に重要になり、黙秘権を行使する等自白を取られないことが重要ですので、この場合もできるだけ早く弁護士に依頼することをお勧めします。

 

中国人の刑事事件、逮捕監禁罪、逮捕、示談、不起訴、釈放、保釈、執行猶予に関するご相談は、中国語の話せる弁護士永田洋子にご相談ください。

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中国人の刑事弁護(脅迫、強要)

2017-05-12

脅迫罪、強要罪で逮捕されてしまった場合、どのように対応したら良いでしょうか。脅迫罪、強要罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(脅迫)

第222条  生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

2  親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

(強要)

第223条  生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

2  親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。

3  前二項の罪の未遂は、罰する。

 

222条は脅迫罪に関する規定です。脅迫罪の保護法益は個人の意思決定の自由です。本状にいう脅迫とは、狭義の脅迫をいい、恐怖心を生じさせる目的で、相手方またはその親族の生命・身体・自由または財産に対し、害を加えることを告知することをいいます。表示された内容を客観的事情に照らして解釈し、人を畏怖するに足りる害悪の告知か否かを判断することになります。害悪の対象は、相手方またはその親族の生命・身体・自由・名誉・財産です。

告知される害悪の内容は、相手方の対応および客観的状況から判断して、一般に人を畏怖させるに足りる程度のものであることが必要です。害悪の発生を行為者において現実に左右できる性質のものでなければならないことから、天罰が下るといった予言予告の類は本罪を構成しません。加害が脅迫者以外の第三者によるものの場合、行為者の直接間接の影響力によって客観的に加害が実現されうるようなものであることを要します。加害の内容が一般人の見地からみて人を畏怖させる程度のものであれば、具体的な加害の方法や手段の告知までは必要ではありません。

害悪を告知される相手方は、幼者でも精神病者でもよいが、意思活動能力を有する者であることを要します。また、本罪の保護の対象は自然人に限られ、法人を含みません。告知方法の如何を問いません。

223条は強要罪に関する規定です。保護法益は個人の意思決定の自由になります。行為は、相手方またはその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対して、害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことをおこなわせ、または権利の行使を妨害することです。

脅迫は、脅迫罪のものと同じく協議の脅迫です。暴行は、被害者が畏怖し、そのため行動の自由が侵害されるに足りる程度の有形力の行使であることを要し、かつ、それで足ります。

強要するとは、暴行・脅迫を手段として人に義務のない行為をさせ、または権利の行使を妨害することをいいます。暴行・脅迫の相手方と、義務のないことをおこなわされ、または、おこなうべき権利を妨害された者とは必ずしも一致することは必要ではなく、その両者が異なるとこは、本罪の被害者はその双方になります。

 

以上、脅迫罪、強要罪の解説をしてきましたが、脅迫罪、強要罪で逮捕されてしまった場合、どのような弁護活動が有効でしょうか。上記に書いた通り、脅迫罪、強要罪の双方とも、保護法益は個人の意思決定の自由ということになります。そこで、被害者と示談をすることが非常に有効な弁護活動になると考えられます。慰謝料等を支払い、示談をして、被害者に許してもらうことができた場合には、事案にもよりますが、不起訴になる可能性があります。また、起訴されてしまった場合でも、示談成立は非常に有利な証拠になります。処分関係のみならず、逮捕勾留されている場合でも、示談が成立すれば、釈放される可能性もあり、起訴後は保釈も認められやすくなる等、身柄解放の時期も早まると考えられます。よって、脅迫・強要罪で逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く弁護士に依頼して、示談交渉を進めることをお勧めします。

なお、否認している場合には、取調べ対応が特に重要になり、黙秘権を行使する等自白を取られないことが重要ですので、この場合もできるだけ早く弁護士に依頼することをお勧めします。

 

中国人の刑事事件、脅迫罪、強要罪、逮捕、示談、不起訴、釈放、保釈、執行猶予に関するご相談は、中国語の話せる弁護士永田洋子にご相談ください。

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中国人の刑事弁護(名誉棄損、侮辱)

2017-05-11

名誉棄損罪、侮辱罪で逮捕されてしまった場合、どのように対応したら良いでしょうか。名誉棄損罪、侮辱罪について、刑法では以下のように規定されています。

刑法

(名誉毀損)

第230条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

2  死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

(公共の利害に関する場合の特例)

第230条の2  前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

2  前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。

3  前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

(侮辱)

第231条  事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

(親告罪)

第232条  この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

2  告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。

 

230条は名誉棄損罪に関する規定です。保護法益は外部的名誉と解されています。人とは、自然人のほか、法人、法人格のない団体も含まれます。特定の人、団体であることを要し、漠然とした集団名は含まれません。死者は人には含まれませんが、230条2項の対象となります。

名誉とは、人に対する社会一般の評価を意味します。人の経済的な支払能力および支払意思に対する社会的評価は含まれません。

行為は、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損することになります。公然とは、不特定または多数人が認識しうる状態をいいます。多数人が認識しうる状態であれば名誉が侵害されうるし、相手が多数人でなくとも不特定人が認識しうる状態であれば、名誉が侵害される蓋然性が高いといえるからです。不特定人とは、相手方が特殊の関係によって限定された者でない場合をいいます。たとえば、公道の通行人や公開の広場における聴衆がこれに該当します。また、多数人とは、数字によって何人以上と限定はできませんが単に数名では足りず、相当の員数であることが必要です。名誉侵害表現の相手方が特定少数の場合であっても伝播して不特定多数の者が認識しうる可能性を含む場合にも公然性が認められます。

摘示される事実は、人の社会的評価を害するにたりる事実であることを要します。人の社会的評価を害するかどうかは相手方の有する名誉によって相対的に決まります。事実が真実か否か、公知か否か、過去のものか否かは問いません。

摘示とは、具体的に人の社会的評価を低下させるにたりる事実を告げることをいいます。摘示の方法・手段に制限はなく、口頭でも文書でも動作でもよいが、特定人の名誉が侵害されたと分かる程度に具体的であることを要します。摘示方法は風聞、噂、伝聞でもよいとされています。わいせつな写真と被害者の顔写真を組み合わせたものを公衆の目に触れる場所に掲示した行為も摘示に該当します。

名誉を毀損とは、社会的評価を害するおそれのある状態を発生させればたります。

230条の2は、公共の利害に関する場合の特例の規定です。この要件に該当すれば、名誉棄損行為があっても罰せられなくなります。

公共の利害に関するとは、一般多数人の利害に関することを意味し、その事実が抽象的にみて公共的な性質のものであることをいうのではなく、公共性のある事実を評価・判断するための資料になりうることをいいます。公共の利害に関するといえるためには、その事実を公表することが公共の利益の推進にとって必要な限度のものでなければならず、かつ、その事実が公共の利害に関するものであることが一定程度明白でなければなりません。私人の私生活上の行状であっても、そのたずさわる社会的活動の性質およびこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法230条の2第1項にいう公共の利害に関する事実にあたる場合があると解するべきであるとした判例があります。

目的とは、動機のことです。専らとは、通常の意味とは異なります。唯一の動機のみによって人間は行動するわけではないから、主として公益を図る目的があればよいと解されています。真実性の証明の挙証責任は被告人側となっています。では、真実性の証明ができない場合、真実性に錯誤があった場合にはどのようになるでしょうか。この点について、判例は以下のように判示しています。「刑法230条の2の規定は、人格権としての個人の名誉の保護と、憲法21条による正当な言論の保障との調和を図ったものというべきであり、これら両者間の調和と均衡を考慮するならば、たとい刑法230条の2第1項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉棄損の罪は成立しないものと解するのが相当である。」

231条は侮辱罪に関する規定です。保護法益や公然、人の意義は名誉毀損罪と同様になります。名誉毀損罪との違いは、事実の摘示の有無と解されています。すなわち侮辱とは、事実を摘示することなく、他人の人格を蔑視する価値判断を表示することをいいます。

 

以上、名誉棄損罪、侮辱罪について解説をしてきましたが、名誉毀損罪、侮辱罪で逮捕されてしまった場合、どのような弁護活動が有効でしょうか。ここで、刑法232条を見ていただければわかる通り、名誉棄損罪、侮辱罪は親告罪となっています。そのため、被害者と示談をして、告訴を取り下げてもらえれば、不起訴になるということになります。名誉棄損罪、侮辱罪で逮捕されてしまった場合には、まずは示談を検討すべきであり、弁護士に依頼することをお勧めします。

名誉棄損罪、侮辱罪について、否認している場合であっても、取調べ対応が非常に重要となってきますので、できるだけ早く、弁護士に依頼することをお勧めします。公共の利害についての主張をする場合、立証責任は被告人側にありますので、そのための資料を収集して裁判の準備等もする必要があります。公共の利害に関する主張とともに、真実性の立証ができなくとも真実性の錯誤の主張の二段構えで準備する必要性があると思われます。

 

中国人の刑事事件、名誉毀損罪、侮辱罪、示談に関するご相談は、中国語の話せる弁護士永田洋子にご相談ください。

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